2016 年 12 巻 2 号 p. 36-45
本研究の目的は、英国の運動ニューロン疾患(MND)患者を対象としたMNDケア・研究センター(MNDクリニック)の役割から、日本の神経難病患者が発症あるいは診断から終焉まで、連続的で包括的な質の高い医療・ケアが受けられるような保健医療システムの構築の可能性を探ることである。英国・イングランドにあるMNDクリニックの専門看護師(CNS)3名を対象に、MNDクリニックの役割や地域連携、CNSの仕事内容や役割、ケアの連続性や質の維持について、インタビュー調査を行った。英国ではMNDのみの外来があり、専門看護師や臨床心理士、緩和ケアチームが個々に診察室で面談し、これらの専門家の助言が1日で受けられるようになっていた。またCNSは、「認定された資格」ではなく「職(post)」であり、同職種内での階層性が存在していた。一方、日本の専門看護師制度は「職(post)」を意味しておらず、日英におけるCNSの立場に相違が見られた。地域との連携においては、様々な手段を活用した情報共有や、MND-CNSによる療養の場での教育的関与がなされていた。さらに、MNDケアにおける様々な意思決定支援はMNDクリニックに集約されていた。一方で、都市部の病院においては看護師の定着率が低く、ケアの質を維持することが課題であると語られた。