2016 年 13 巻 1 号 p. 1-11
本論文は質的研究が普及定着過程にある現在、その可能性を確認的に検討したものである。とくに、1990年代初めに既存の専門領域を横断する形で独自の領域化を遂げたとされる質的研究の形成背景を踏まえたうえで、時代的には先行していたグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)との緊張をはらんだ関係を確認する。そして、オリジナル版GTAの可能性を、未完のままとなっていたグレーザー的部分とストラウス的部分の統合、すなわち、客観主義の立場は取らないがシステマティックなコーディング法は精緻化するという課題と、意味の解釈の重視による深い解釈は継承しつつも分析結果の一般化の可能性を確保するという課題の統合を意図して考案されたM-GTAの分析過程を概略的に述べる。