抄録
<目的>
被服製作の必要性などが薄れてきている今日において、家庭生活の現状をふまえ、小学校学習指導要領では「ほころび直し」などの衣生活に関する内容が削減されている。 また現代では、子どもの手指の巧緻性の低下が問題視されている。本研究では、児童の手指の巧緻性と手縫いに対する意識、実態について明らかにし、今後の家庭科の授業での発展に役立てることを目的としている。
<方法> 2002年2月から3月にかけて、関東地区1都2県の小学較7校の5、6年生男女932名(男子457名、女子475名)を対象に、による質問紙調査を実施した。 調査の概要は、手指の巧緻性、手縫いに対する意識、家庭での実践などについて66項目を設定した。
<結果> ? 手指の巧緻性、手縫いに対する意識、家庭での実践などすべての項目で5年生と6年生との学年差は見られなかった。
?「手を使って何かを作ること」「ハサミを使うこと」をとても好き、少し好きと感じている児童は全体的に高い割合であったが、「針や糸を使うこと」「縫って何かを作ること」などの手縫いに対する好き嫌いに関しては、女子の70%以上が「とても好き・少し好き」と回答していた。しかし、男子では60%程度が「全く好きでない・あまり好きでない」と回答し、男女差が認められた。同様に、手縫いに対する学習意欲に関する項目の結果にも男女差が見られた。
?「ハサミで線にそって切る」「紙の端を揃えて折る」「ひもを結ぶ」などの手指の巧緻性に関する項目や「糸通し」「玉結び」「玉止め」「なみ縫い」「返し縫い」の手縫いの基本的技能について、「よくできる・できる」と回答した児童の割合は高いが、「玉どめ」「返し縫い」「ボタン付け」などを技術的に難しいと感じていた。また、「他の人に比べて、縫うことが得意」「自分は器用な方だ」「縫って何かを作ることに自信がある」など手縫いに対する自信について、全体の約7割の児童が縫うことに対し、自信を持っていなかった。
?「家で手縫いの小物などを作る」「ボタンが取れた時、ボタン付けをする」「縫い目がほどけたら、縫い直す」などの家庭での実践に関する項目では、「全くしない・あまりしない」と回答した児童の割合が非常に高く、「ボタン付け」では80%近い児童が家庭で実践していなかった。しかし、「家の人(母線、祖母など)が縫い物をしている所を見る」「家の人の手作りの物を使う」「家の人から縫い物を教わる」などを肯定していた児童は、家での実践率や手縫いに対する学習意欲も高く、技術の定着も見られた。つまり、家庭での母親、祖母の様子が児童の家庭での実践、学習意欲、技術の定着に影響を与えていると言える。家庭での実践率は低いものの、全体で約80%以上の児童が「色々な縫い方を覚えておくと役立つ」「自分でボタンを付けられるようになることは役立つ」といった日常生活における手縫いの有用性を認識していた。
? 児童の多くは失敗などにより途中で集中力を欠いてしまう面も見られるが、全体の児童の約6~8割が手縫いでのもの作りにより成就感、達成感を得ていることがわかった。以上のことから、児童が困難と感じている内容、学習意欲を高めるための指導方法や家庭科で学習したことを日常生活で活用できるような教材開発をする必要がある。