日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 26
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第46回大会口頭発表
食教育における生産からのアプローチ
栽培した米を食べるまでの授業に見られる食意識の形成
*野田 知子
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抄録
1.研究の意義 
l-1.問題の所在 現代日本では、食べ物を食べずに捨てる「食品ロス」、食品の安全性をめぐる問題等が多発している。これらの背景には、食と農の距離の拡大や食の外部化等の社会の変化がある。
1-2.生産から消費までの食教育 食をめぐる社会的問題の解決のためには、食物に関する観念や価値の形成を促すことを目標にした教育の必要性が求められている。筆者らの調査により、「食べ物を大切にする意識や行動には、栽培体験が影響を及ぼしている」等がわかった。生産と消費の乖離等で生じた食べ物に対する認識のみぞを埋めるには、生産活動を組み込んだ教育を行う必要がある。
2.研究の対象と研究課題
 2-1.研究対象  T大学付属中学校3年生の総合的な学習の時間の「食糧生産と身近な食品加工」(技術科教諭担当)の後期の授業(収穫した米を脱穀・精米して食べるまでの授業)を対象とする。
2-2.研究課題  授業での生徒の行動や会話を通して、食意識がどのように形成されていくかを明らかにすることを研究課題とする。
3.研究方法 授業中の行動を観察して行動の背後の心理的プロセスを解釈する解釈的アプローチや、会話を記録し分析する談話分析、面接法、感想文の分析を併用した(フィールドの観察を基礎にした質的研究)。
4.フィールドの概要 小学校では1~6年生の縦割りの団で栽培の経験がある。研究対象は後期の授業であるが、前期にはバケツで稲の栽培をしながら、食文化を学ぶ実践的授業が行われた。研究対象の授業を受講した生徒は4人で「せっかく育てたのだから最後までやりたい」と思って受講した生徒である。3人は小学校からの内部進学者、1人は中学校からの外部進学者である。担当教諭は、農家出身の男性である。
5.授業の概要収穫したバケツ稲の脱穀・もみすり・精米をおこなってから炊いて食べる授業をおこなった。精米した米を炊飯器で炊いている間、米作りについて、資料や写真、授業者の経験を交えての授業がなされた。米作りが描かれている小説の読書が課題として出されていた。
6. フィールドノーツ・感想文・インタビューの分析と結果
 6-1 フィールドノーツ(行動と会話)の分析  行動と会話は、「拾う行動」「もったいない」「残さずに全部食べる」(「米を大切に思う気持ち」)「喜び」「おいしい」「感謝」「“いのち”を感じる」「米作りの大変さがわかる」等のカテゴリーに分けられた。これらが「生徒の食意識の形成につながる」と考えられる。
6-2 育てた米を炊いて食べたときの思い(米を食べた感想文より「今まで無意識に食べていた米」「愛情を注いできた米」「苦労して育てた米」のカテゴリーに分けられた。
6-3 「米を栽培し、食べられるようになるまでの作業をすることを通して思ったこと」(インタビューより)  個々人の、経験などにより、認識の違いが明らかになった。
7.考察  ?食べ物に対して、無意識で食べていたものを意識して食べるようになり、米を大切にする・捨てない・拾う行動をするようになる。? 稲を育てることで、稲の生命のすごさに気づき、食べ物の「いのち」を認識出来る可能性がある。? 食べるようになるまでの苦労と成就感が、喜びにつながり、大切に思う気持ちや感謝の気持ちをいだかせる。? 栽培学習の経験の量と質が認識の深さの違いを生む。
8.今後の課題 栽培中の認識の変化が食意識形成にどのように関わっているか課題として、研究中である。
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© 2003 日本家庭科教育学会
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