抄録
【目 的】平成10年度国民栄養調査結果では、若い女性に「やせ志向」がすすみ、理想とする体型もスリム化していることが示されている。また、先行研究には1990年代以降、やせ願望のために過度の食事制限を行う者が低年齢化していることを問題視する報告が多数みられる。 筆者らは、子どもたちがやせ願望により必要以上に食事制限を行うという問題を解決するためには、子どもたちに対して自己の食生活管理能力を高め、健康を意識した食意識を培うための食教育をう必要性があるのではないか。そして、その時期としては心身の成長が著しく、自己の食生活を管理する機会が増す中学生段階が効果的ではないかと考える。そのためには、やせ願望をもつ子どもたちの背景を探る必要があるが、先行研究には、特に女子大学生を対象とした、BMI判断による肥満度と体型に対する意識、健康状態との関係等について調査した報告はあるものの、中学生を対象にBMI判断ではなく具体的な体型モデル図をもとに、自己の体型や理想の体型についてどのように認識しているか等を調査した報告はほとんど見あたらなかった。また、大学生のやせ願望については、セルフエスティームと相関関係があることが報告されているが、中学生のやせ願望とセルフエスティームおよび体型認識との関係性についての研究は、十分にされているとは言えない。 そこで本研究は、健康を意識した自己の食生活管理能力を養う食教育のあり方を検討するために、先ず、中学生の食生活や体型に対する意識、やせ願望の有無と自己の体型認識、セルフエスティームと家族に対する意識についての調査を行い、基礎的資料を得ることを目的とする。
【方 法】対象は函館市および近郊の公立中学校10校の1~3年生の男子428名、女子447名の計875名である(有効回答率は97.2%)。調査は無記名自記式質問紙法で、ホームルームや家庭科の授業時間に教師立ち会いのもとで実施し、記入後即時回収した。時期は2002年12月。内容は属性、食生活や体型に対する意識、やせ願望の有無と自己の体型認識、セルフエスティームと家族に対する意識などの全65項目である。なお、体型に対する意識の質問項目としてはボディ・アセスメントツールを参考に、?身体を意識する感情や行動に関する項目、?身体に関する劣等感に関する項目を設けた。体型認識に関しては、筆者らが作成したやせ型から肥満型まで男女8種類の体型モデル図を基準とし、?自分に近いと思う体型、?標準と思う体型、?理想とする体型について回答を求めた。 集計・分析は、「SPSS11.0 for Windows」を使用し、統計的な有意差検定には、X2 検定を行った。
【結 果】主に、男女別や学年別でみた結果の概要を述べる。?食生活に対する意識では、食事とは生命活動を維持するためのエネルギー摂取及び栄養素を摂取することと理解していた者が男子に多く、男子の方が女子に比べて基本的食習慣が身に付いていた。?体型に対する意識について、女子は「やせ願望」の強い者が多く、自己の体型も標準体型よりも太めに認識している者が多くみられた(危険率0.1%)。その背景には、やせていることに対するイメージに男女差が認められ、女子は「やせていることは魅力的」と思っている者が多いのに対し、男子は「やせていることと魅力とは関係ない」と思っている者が多かった。?自己の捉え方では、男子は「自分を肯定的に捉える意見を持っている者」が多いのに対し、女子は「自己を否定的に捉える意見をもつ者が多くみられた。また、学年別では「あらゆる面で自分よりもできる人を見たときに、その人を見習って頑張ろうと思う」という意見をもつ者は、学年進行に伴って減少傾向にあった。