日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 29
会議情報

第46回大会口頭発表
1人・1品・3まわりでの調理実習における生徒
各人の成長過程-高等学校必修家庭科の授業-
*中屋 紀子児玉 重嘉長澤 亜紀子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
<研究目的>これまで、私たちは「1人・1品・3まわり」の調理実習を提案してきた。(中屋・堀江・平本『1人・1品・3まわり新しい調理実習の試み』教育図書?参照)この方法の目的は、3つある。1つは、実習の参加者すべてに目標とする調理技術を習得させることである。2つは、主食+汁、主菜、副菜を作ることを通して、また試食の際の配膳を通して、バランスのとれた・食事を生徒に感覚的につかませることである。3つは、共同して働く体験を通して、相互の連携と協力の必要性を生徒たちに体得させることである。この目的にそって、1999年度に、実験授業を行った。その際、生徒たち各人の成長をみるのが、本稿の目的である。 昨年度に報告したのは、選択家庭科の結果であるが、本報告は、実施回数も少なく、履修人数も多い必修家庭科での結果である。
<研究方法> 実験校は、仙台市内にあるT高等学校「生活一般」の授業である。1年生30名の男子9名、女子21名のクラスを対象とした。実習のようすは3台のビデオカメラで記録し、資料とした。 1人・1品・3まわりの最初と最後である第2回と第4回を比較検討した。第1回目の調理実習は調理室の施設設備を知ることと包丁と火気の扱いの基本を復習することを目的としておこなった。
<結果と考察> 第2回の調理実習での献立は、主食(白飯+みそ汁)、主菜(鮭のホイル炊き)、副菜(きんぴら牛蒡)であり、第3回目は、主食(白飯十すまし汁)、主菜(すき焼き風煮込み)、副菜(へルシーポテトサラダ)、第4回は、主食(白飯+コンソメスープ)、主菜(白身魚のピカタ)、副菜(温野菜サラダ)である。成長のようすを見るため、以下7項目の評価基準に従って、第2回に問題点があった事項を生徒各人、リストアップした。?安全への配慮はしているか、?調理器具や方法などの知識理解は十分か、?盛り付けや配膳は適切か、?調理技能はついたか、V作業の見通し計画性はあるか、?自立して行動するか、?連携して行動できるかである。リストアップされた問題点が、第4回実習時には改善できたかどうかをはかった。その結果を「改善」、「やや改善」、「変わらない」であらわした。もとからできる生徒が2名おり、また記録の制約上分析できなかった生徒が1名いた。残りの27名の結果は以下である。?から?のなかで、最もよく改善したのは、?に属する「手助け」で94%、続いて?の「切る」で81%、その他、?の「危険行動」62%、「調理器具」60%、?の「問題解決」58%が「改善」と「やや改善」であった。 生徒各人を見ると、よく成長した15%は、調理器具の使い方を知り、切る技能が上達した。また、調理方法についてもよく知り、見通しを持って行動することができるようになった。自分で問題解決をするようになり、1人で1品を責任持ってできるようになった。続いて成長した22%は、調理器具の使い方を知り、切る技能が上達した。しかし、調理方法を十分に知ることができず、そのため見通しを持って行動することが余りできなかった。しかし、問題解決を一定程度しようとしていた。1人で1品を一定程度責任持ってできるようになった。さらに、続く37%はすでに述べた生徒たちと比べて調和のとれた成長は遂げていなかったが、どこかの項目で改善しており、何らかの意味で改善をしていると判断できた。結果、74%が成長したと言える。しかしながら、残りの26%は成長を遂げたとは言えなかった。 この検討を通して、もっとよく生徒の成長を求めるためには、献立構成を再検討する必要があるということに気づかされた。
著者関連情報
© 2003 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top