抄録
目的 従来わが国では、基本的な生活習慣は家庭で獲得することができていた。ところが、高度商品化社会の到来で家事の合理化が進行し、子どもが家事参加する機会が減少したことや、親たちが子どもに家事を通じて生活文化を伝えようとする意識が薄れがちになったことを背景に、箸の持ち方やマナーなどの箸文化の伝承がなされなくなっている状況がみられる。そこで、本研究では、現代の中・高校生を対象に、箸の持ち方・箸のマナーの知識と実態、箸文化の伝承に関する意識を調査し、今後の箸文化伝承のための課題を考察する。
方法 鳥取、広島県の中・高校生712名に?箸の持ち方やマナーの知識・実態?著さばきの実態?箸の持ち方やマナーの伝承経験?箸の持ち方やマナーの伝承意識・伝承能力を2002年3月質問紙法により調査した。
結果 箸の持ち方7種の図の選択肢からの正答者は中・高校生の83%であったが、実際に箸を正しく持っている生徒は 56%のみであった。また、箸のマナー7つについては、生徒の約3/4が知っていた。箸さばきの実態を尋ねた結果、骨付き魚の「骨と身をきれいに分けられる」生徒が49%、「どちらともいえない」生徒28%、「きれいに分けられない」生徒が23%であった。一口大のミートボールは、「はさんで食べる」生徒が57%、「突き刺して食べる」生徒30%、「はさむ、突き刺すどちらともで食べる」生徒が13%であった。一口では食べられないコロッケは、「一口大に割って食べる」生徒が65%、「そのままかじる」生徒が35%であった。 次に、家庭における箸文化の伝承経験を尋ねたところ、「正しい箸の持ち方を教わった」生徒は67%、「教わっていない」生徒が15%、「覚えていない」生徒が28%であった。「覚えていない」と回答した生徒が3割近くいることから、印象に残るような教え方や、教える時、教える場などの配慮が必要であることが寮える。同様に、家庭での「箸のマナー」の伝承経験についても同じ傾向がみられ、家族に「箸のマナーを教わった」生徒が46%、「教わっていない」生徒が18%、「覚えていない」生徒が36%であった。 次に、中・高校生の箸文化の伝承意識を把握するために「将来、あなたは箸の持ち方や箸のマナーを子どもたちに教えるべきだと思いますか?」と尋ねた。最も多かったのは、「非常に思う」の44%、ついで「少し思う」の41%、「どちらともいえない」が9%、「あまり思わない」・「全く思わない」は同割で3%という順であった。「非常に思う」と「少し思う」を合わせて85%の生徒が箸文化の伝承に関して意欲的で、次世代教育力が高まる時期にある中・高校段階においてこそ、箸文化の伝承意識や能力をさらに高める学習を設志することが効果的であると考えられる。