抄録
<目的>
1998年の教育課程の改訂において、「問題解決的な学習」を通して「問題解決能力」の育成を図ることが家庭科教育の基本方針として示された。家庭科は、生活における問題解決能力を育てる教科であり、生活実践につながる問題解決学習の充実を図ることは重要である。しかし、先行授業実践において子どもが主体的に学ぶ問題解決学習は少なく、内容的には、教師によって用意された枠組みの中で系統的に学習する「課題解決学習」であることが多い。そこで、本研究は、特に問題解決学習による実践の少ない中学生に焦点を当て、生徒の実態と問題解決への意識、および問題解決態力の実態を明らかにし、さらにそれぞれの関連をみることで、家庭科において問題解決能力を育成するための示唆を得ることを目的とする。
<方法> 福井市および近郊の中学校4校の2年生を対象に、2002年11月から12月にかけて自記式質問紙法で調査を実施した。回答数は318名である。調査の枠組みは、「基本属性」と「生徒の実態・意識・能力」を2つの柱とし、後者については、「発達指標」「問題解決への意欲」「問題解決能力」の3つの視点から質問を構成した。このうち「発達指標」は以下の6項目、「問題解決への意欲」は以下の7項目について各々設問を設定した。また「問題解決能力」は、消費者と家庭経営に関わる問題への対応を自由記述でたずね、その解答を点数化した。
【発達指標】自立度、人との関わり、自尊感情、市民性、自己決定、自己資源
【問題解決への意欲】疑問をもつ、知らないことを知ろうとする、じっくり考える、目的をはっきりさせる、計画を立てる、実行力がある、行動を振り返る
<結果と考察>
1.問題解決への意欲:
中学生の「間穎解決への音欲」に対する自己評価として、肯定的な評価の割合が高い項目は「実行力がある」「知らないことを知ろうとする」「疑問をもつ」で、それぞれ7割前後を占めた。性別による差は、「じつくり考える」で男子、「計画を立てる」で女子がそれぞれ肯恵的に評価する割合がより高い傾向がみられた。
問題解決への意欲と「発達指標」との関連では、指標のうち「市民性」との間に最も有為な関連性が認められ、次いで「人との粥わり」「自尊感情」「自己資瀬」で高い関連性がみられた。これらの発達指標は、問題解決意欲の形成に大きく関わっていると判断できる。一方で「自立度」との関連性は低く、特に「疑問をもつ」「知らないことを知ろうとする」など問題認識にかかわる意欲との間に関連性が認められなかった。
なお、「問題解決への意欲」どうしの関連をみたところ、「疑問をもつ」および「知らないことを知ろうとする」ことへの意欲の高い生徒は、「間題解決への意欲」の全項目において高くなる傾向が認められた。
2.問題解決能力:
問題に対応し解決する力は、女子がより高い傾向がみられた。これは、女子の記述量が男子に比べ多いことも影響していると思われる。
発達指標のうち、「市民性」や「自己決定」する力の高い生徒は、間題認識力も高い傾向がみられた。また、「消費者問題」では「市民性」「自己資源」「自尊感情」の高い生徒、「家庭経営問題」では「市民性」「人との関わり」「自尊感情」「自己資源」の高い生徒が、それぞれの問題への対応を考える力がより高い傾向が認められた。一方、発達指標のうち問題解決能力との間に全く関連が認められなかったのは「自立度」のみであった。
「問題解決への意欲」と「問題解決能力」との関連をみたところ、特に「疑問をもつ」と「知らないことを知ろうとする」ことへの意欲の高い生徒は、問題解決能力が総合的に高くなる傾向が認められた。
また、問題認識力と「消費者問題」「家庭経営問題」の解決方法を考えるカには、ともに有為な関連がみられた。
以上のように、生徒の「間鴇解決への意欲」および「問題認識力」を高めることが、問題解決能力の向上のうえで重要であることが明らかになった。それぞれに関わる発達指標を学習に組み込み、問題解決学習をすることが実践的な問題解決能力の向上につながると考える。