日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 59
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第46回大会ポスターセッション
高校『家庭一般』の教科書のおける児童虐待の取り上げ方
-児童虐待防止教育の教材開発のために-
上野 顕子
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抄録
【目的】近年、テレビや新聞などマスコミの報道で児童虐待のニュースが報じられない日がないといえるほど児童虐待は社会問題として取り上げられ、世間の関心も高い。厚生労働省大臣官房統計情報部「社会福祉行政業務報告」によると、実際、児童相談所に寄せられる虐待相談は増加傾向にあり、全相談内容のうち、その他を除くと、最も高い割合を占めている。1990年度から2000年度の10年間の虐待件数を見てみると、2000年度は17725件で、1990年度の1101件に比べると約16倍と増加している。また、虐待相談経路としては家族からが最も多いが、その割合は減少傾向にある。かわりに、近隣・知人からの相談が増加しており、1997年度では8%であったが、2000年度には15%となっていることから、虐待に対して家族以外の介入が高まってきていると考えられる。 
しかし、このこととは裏腹に、児童虐待についての教育は学校教育の中でほとんどなされていない。児童虐待は習慣として親から子へ受け継がれていってしまう可能性が高いことはすでに多くの研究で明らかになっている。それにも関わらず、虐待が次世代に受け継がれる前に防ごうという取り組みや、児童虐待とはどのようなことであるかを伝え、虐待者が増えるのを防ぐ活動が学校教育現場で行われることは少ない。こうしたことから、児童虐待は将来親になる可能性がある生徒、特にその可能性により近い高校生の段階で、学校教育の場において、また保育に関わることを学ぶ家庭科を通じて、児童虐待防止にっいて学ぶ必要性は高いと思われる。 
そのため、本研究では、まず高校家庭一般の教科書の中での児童虐待の取り上げ方を捉え、この研究の次段階で児童虐待防止教育の教材開発・授業実践のための基礎資料をつくることを目的とした。
【方法】2002年度に出版された高校の家庭一般の教科書6社12冊において、児童虐待がどのように取り上げられているかを分析した。まず、児童虐待についての記載の有無を調べた。次に記載の仕方により分類した。分類方法は、本文もしくは欄外に「虐待」という語が記載されているか、また子どもの権利条約や児童憲章の抜粋として「虐待」という語が記載されているのかという視点を用いた。さらに、児童虐待について本文や欄外で記載しているものの内容についてどのような視点に立ち、児童虐待を記述しているかを調べ分類し、その特徴をつかんだ。
【結果】高校の家庭一般の12の教科書のうち児童虐待の記載があるものは8冊、ないものは4冊だった。記載がある8冊をその記述の仕方により分類すると、本文中もしくは欄外に「虐待」という語が記載されているものは7冊で、子どもの権利条約や児童憲章の抜粋として「虐待」という語が記載されているものは5冊であった。さらに、前者7冊について内容を分析し、児童虐待を記述する視点で分類すると、おおむね3つの視点で書かれていることがわかった。それらは、?子どもの権利を侵害する行為として児童虐待を扱う視点、?親の視点に立ち保育における問題として児童虐待を扱う視点、?現代社会に起こっている社会問題として児童虐待を扱う視点の3つの視点である。それぞれに分類される教科書の数は4冊、2冊、3冊である。児童虐待防止法を載せているのは1冊だけだった。
以上より、高等学校の家庭一般の教科書において児童虐待に関する記載はすへての教科書にあるわけではなかった。さらに、児童虐待に関する記述はあるものの、児童虐待の記述の視点は、子どもの権利の侵害や社会問題や保育問題であり、児童虐待を身近な問題として捉え、新たな加害者になりそうな時助けを求めたり、児童虐待が起こっているサインを感じとり手助けや防止に力を貸したりする児童虐待防止までには至っていなかった。
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© 2003 日本家庭科教育学会
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