抄録
【目的】平成10年の学習指導要領の改訂によって、小中学校ともに内容が大綱化された。その結果、教員一人ひとりのカリキュラム編成能力が問われるとともに、題材の系統性を意識した配置や、小中学校の連続性がより一層重要視されるようになった。
多様な学習内容を含む家庭科は、これまでもスパイラル型の学習を重視してきた。授業時数の削減、及び内容の大綱化を考慮すれば小中学校6年間を連係させたカリキュラム構想が、これまで以上に有意義になってくると考える。
そこで本研究においては、小中学校5年間のカリキュラムを、家庭科における意思決定力の育成を視点として検討することを目的とする。なお、本研究では、意思決定力を家庭科教育で育てたい能力の中核的なねらいとして位置づけるものとする。
【方法】本研究では、次の2つの方法によってカリキュラムを検討する。
(1)雑誌等に掲載された実践報告の分析
分析の対象としたのは、平成2年4月から平成13年3月までに発行された、以下の雑誌等である。? 家政教育社「家庭科教育」64巻5号~76巻4号(144冊) ? 芽ばえ社「家庭科研究」No.65~No.208(144冊) ? 消費者教育支壊センター「消費者教育研究」No.1~No.93(93冊) ? Assetビジュアル家庭科教育実践講座1巻~13巻
これらの雑誌等に掲載された小中学校家庭科の実践報告を抽出し、意思決定力育成のレベルによって分類する。分類の基準は、以下のとおりである。
A:意思決定力の育成を非常に重視する 意思決定プロセスの段階をふまえ、意思決定力の育成を主たる目標とする。
B:意思決定力の育成を重視する 意思決定力の育成が主たる目標ではないが、学習活動に意思決定プロセスの段階の一部を含んでいる。
C:意思決定の必要がある 学習活動の中に、意思決定の必要がある場面が含まれている。
D:意思決定の場面がない
(2)附属学校における年間指導計画の分析
平成14年度の附属新潟小学校及び附属新潟中学校の年間指導計画の題材名とねらいを整理し、それらを意思決定力育成のレベルによって分類する。分類の基準は、上記(1)で示したA~Dとする。
【結果】
(1)分析対象とした実践報告は、全部で550であった。そのうち、Aレベルの実践は18(3.3%)、Bレベルの実践は74(13.5%)、Cレベルの実践は124(22.5%)、Dレベルの実践は334(60.7%)であった。Aレベルの実践は、消費者教育と関わりのある授業が大半を占めた。A~Cレベルの実践は、小中学校全ての学年、全ての学習領域で報告されていた。
(2)Aレベルの題材は、小学校には配置されておらず、中学校第1学年と第3学年で配直されていた。Bレベルの題材は、小学校では第5学年の半ば以降、第6学年の全般に、中学校では第1学年の後半、及び第2学年の中盤に配置されていた。 具体的な実践を、意思決定力の育成という横断的な目標を視点として検討することで、評価の方法を含めた中長期的な課題が明らかとなった。