抄録
目的 本報告では,小学生の生活時間を中心とする実態ならびに願いや将来の仕事などを比較検討することによって,両国の小学生の生活に関する実態を明らかにし,両国における生活や学校教育のあり方について考察することを目的とする。
方法 中日両国の4小学校(大学附属各1絞,公立各1校)の4年生から6年生を対象にして,自記式質問紙調査を実施した。ただし,中国公立小学校では調査対象は6年生に限定された。 調査時期は,日本は2001年12月,中国は翌年1月である。回答総数は中国が177人,日本は510人である。
結果
1. 起床時刻は中国の方が日本より早い傾向にある。これは中国の小学杖は8時始業であるためと思われる。また起床方法は,中国では学年があがるにつれて自分で起きる児童が多くなるのに対して,日本では学年があがっても家族に起こされる児童が多くみられた。
2. 食生活に関して,日本の児童はほとんどが朝食を食べていたのに対して,中国では欠食する児童の割合が多かった。夕食は,日本では食事時間が一定せず孤食率が高いのに対して,中国では家族そろって食べている児童が多くみられ,日本では親の労働や通塾の影響が考えられた。昼食は,中国では給食がないため家や学校の食堂で食べる子どもが多く,食習慣の違いが現れる結果となった。
3.学校での過ごし方では,授業前や放課後に日本では遊んでいる児童が多いのに対して,中国では遊んでいる児童が少なく,日本では教師と遊ぶ子どもが中国より多くみられ,教師と児童の親しい関係が感じられた。
4.授業時間以外の学習時間は,中国の児童では学校や家庭での学習時間が多いのに対して,日本では塾通いの頻度が高く,塾での学習時間が長い傾向がみられた。両国ともに調査対象較では受験競争の影響がみられ,学歴社会の問題が浮かび上がった。
5.睡眠時間は,両国ともに問題が感じられ,特に日本の児童は夜更かしであり,睡眠不足の傾向にあった。そのため,「よく思うこと」の項目で「ゆっくり寝たい」や「もっと遊びたい」などが中国よりはるかに多くみられた。
6.家事の手伝い(分担)について中日両国の大学附属の児童比較では「食べた後の食器運び」と「ゴミ出し」以外の10項目ともに中国の方が実施率は高く,公立小学校6年生間の比較でもほぼ同様の結果であった。生活的自立という側面からみても,日本の児童の生活は問題が多いと考えられる。
7.将来なりたい職業について,日本の児童は「わからない」が最も多く,中国では「警察官」が群を抜いて高率であった。日本では選択項目以外の「その他」に多様な職業が記入されたのに対して中国では少なく,中国では「社長・自営業・大学の先生」も人気があり,「医師・公務員・美容師」などは日本より人気が低率であった。
調査結果全体から,中国の児童の方が日本の児童より活気があり将来へ希望を抱いている様子がうかがえ,これから日本の児童にどのように希望や夢を持たせていくのかを教育関係者は模索していく必要があろう。 最後に,本調査実施にご協力いただいた関係各位に謝意を表します。