抄録
【目的】 本研究は、高校生・大学生の着装に対する価値意識を、個人・社会志向性の視点から明らかにすること、また着装に対する価値意識、個人・社会志向性価値意識、自尊感情、他者の表出行動への感受性、自己呈示の修正能力、親の養育態度との関連を明らかにすることを目的とした。 本研究における個人志向性とは、自分独自の基準を尊重し、個性を活かした生き方への志向性であり、社会志向性とは、他者あるいは周囲へ配慮した生き方への志向性である。また、自尊感情とは自尊、自己受容などを含め、人が自分自身についてどのように感じているのか、その感じ方のことであり、自己の価値と能力に関する感覚および感情である。また、他者の表出行動への感受性とは、相手の表出行動に敏感で、洞察力に富んでいることであり、自己呈示の修正能力とは、状況に即しながら自分のふるまいを調節し、他者に特定の印象を与えることをいう。
【方法】 調査対象は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の高等学校の第1~2学年の生徒と大学1~4年の学生であった。調査期間は2003年6月~7月であり、高校生と大学生の着装行動を、個人志向性・社会志向性の視点から認識と実態について調査し、また、個人・社会志向性価値意識、自尊感情、他者の表出行動への感受性、自己呈示の修正能力についての認識と親の養育態度を調査・分析した。
【結果】 高校生・大学生ともに、自分がどのような着装をしたいのかを自覚し、それに従って着装をしていること、また、TPOに合わせた着装をしていることが明らかとなった。また、流行性に関する意識は低く、他の人の気持ち、または社会的な立場を考えた着装はしていないことが明らかとなった。他の人と全く同じ服装はしたくないが、自分だけが目立つ服装をしたいとは考えていないことが明らかとなった。 性別クロス集計の結果、女子のほうが着装に対して高い意識を持っていること、周りの人との人間関係を重視していることが明らかとなった。 学校段階別クロス集計の結果、高校生のほうが着装に対する意識が高く、大学生のほうが社会的なマナーや周りの人との人間関係を重視していることが明らかとなった。 個人志向性価値意識と自尊感情に関連が見られ、自尊、自己受容をすることが、個性を活かすことに関わっていることが明らかとなった。また、個人志向性価値意識の高い人は着装において他者との違いを求めることが明らかとなった。親の養育態度との関連においては、親が子どもの自主性を尊重したり、子どもの個性を活かすことに重点をおいている家庭で育った人は、個人志向性価値意識が高いことが明らかとなった。 社会志向性価値意識と他者の表出行動への感受性・自己呈示の修正能力に関連が見られ、社会志向性価値意識が高い人は、他者の行動に対して敏感であり、周りの人に合わせて自分の行動を修正できることが明らかとなった。また、個人志向性価値意識が高い人は社会志向性価値意識も高い結果となり、個人志向性価値意識と社会志向性価値意識が相互補完的に作用していることが明らかとなった。
今後は、本調査において得られた知見を踏まえ、高校生を対象とした、個性を活かしながらも周囲に配慮した着装ができることを目指した教材の開発を行い、授業実践を通してその有効性を検討する。