抄録
【目的】
家庭科教員養成段階における授業実践力の育成をねらいとした演習(模擬授業)を家庭科教育法の中に組み込んで実践し、学生の学びの分析を通じて、本教育法プログラムの内容や方法を検討する。具体的な目標は以下の通りである。 1 先行研究や文献に示されている記述を基に教師及び家庭科教師に求められる資質能力および授業実践力の構成要素の枠組みを整理する。 2 模擬授業実践を試行し、授業実践に関わる学生の課題を明らかにする。 3 模擬授業実践で見出した課題の改善をねらいとする2度目の模擬授業(以下、改善模擬授業と記す。)を試行し、授業改善に関わる学生の課題を明らかにする。
【方法】
(1) 教師(家庭科教師)に望まれる資質能力の整理 先行研究および文献を参考に、教師の資質能力について記述されている部分を抜き出し、教師(家庭科教師)に必要とされる資質能力の枠組みを整理する。(2) 模擬授業の構想と実施 2回の授業経験(模擬授業、改善模擬授業)を組み込んだ教育法プログラムを試行実践する。授業科目は、中等家庭科教育法(教職に関する科目:2単位、2004年4ー7月実施)で、家庭科教師を目指す3年次生16名を対象とし、模擬授業(および改善授業)は2名から4名のグループを単位として行い、授業を構想する学校種と扱う題材はそれぞれのグループに任せ、授業は複数の学生によるティームティーチングで行うことも可能とする。なお、模擬授業の構想の前提学習として中学校・高等学校家庭科の目標や内容を確認する。(3)課題の確認および改善模擬授業の実施 模擬授業後に自己評価(授業を行った学生)及び相互評価(授業を受けた学生)を行い、各グループの授業作りにかかわる課題を整理する。そして、課題を改善するための方策の検討に基づいた改善模擬授業を実施する。これらの模擬授業および改善模擬授業の実践を通じて、共通して得られる資料や記録を基に授業を比較し、改善の状況を分析・検討する。
【結果】
教師及び家庭科教師に求められる資質能力を整理し、授業実践力の構成要素の枠組みとして、授業構成力、教材研究力、授業展開力を設定した。 模擬授業の実践を通じて、授業構成に関して、目標設定の甘さ、時間配分を考慮した指導過程の難しさが、教材研究に関して、ワークシートや配布資料の内容が、授業展開に関して、生徒への対応などに課題が見られた。 改善模擬授業による課題解決の状況から、ワークシートや配付資料、板書計画などの授業実践前に取り組めるものについては、課題の改善が図りやすいと思われた。また、授業の発話記録から、学生は教師からの一方的な働きかけだけではなく、生徒との柔軟な応答を試みようとしている様子が伺えた。一方で、学校種にあわせた指導展開や柔軟な生徒への応答に課題が残された。今後は、教材研究に不可欠な知識を強化するために専門教科内容との連携のあり方や教育実習との構造的な接続を検討していきたい。