抄録
(目的)初任者研修制度は、教育公務員特例法第20条の2の規定に基づき、新任教員に対して、現職研修の一環として1年間の研修を実施する。研修は、「実践的指導力と教育者としての使命感を養うとともに幅広い知見を得させる」ことを目的としていて、_丸1_校内研修 _丸2_校外研修 _丸3_宿泊研修 の3つの内容で実施されている。
本研究は、この初任者指導の「_丸1_校内研修における教科指導」に焦点をあてる。教科指導では、教員が自信をもって授業に臨み、児童・生徒が期待をもって学習に取り組むことが大切である。従って、初任者研修の重要な部分が指導法の習得にある。そこで、初任者が教室で展開する授業を記録し、授業中の児童の反応、初任者指導教員の指導内容との関連から初任者が授業を改善していくための視点を探る。授業改善は、個人でできにくい。初任者指導教員が配置されている現在、指導教員は、初任者に授業改善のための視点を提示することができれば、初任者は、自信をもって授業に臨むことができる。また、その後も定期的に自己診断をしながら授業を改善していくことができるのではないかと考えた。
本稿では、授業記録を初任者の発問内容と児童の様子から分析した結果を報告する。
(方法)初任者4人の授業記録を教師の発問と児童の応答を中心に記録し、その内容から教師の授業を進める際の発問を意思決定プロセスの過程にあてはめて分析する。調査は、2004年4月から2005年3月までの1年間の授業記録を収集して分析した。初任者4名の性別は女性。4名の内、講師経験が1年以上の初任は3名、新卒者は、1名である。
(結果と考察)初任者の授業は、授業の導入で目標や問題を明確にする発問をした直後、課題に取り組むよう発問する教師主導の授業展開が多くみられた。よって、課題や解決方法を理解できない児童は学習に集中できなかったり、再度説明を必要としたりするため、授業が混乱したり長引いたりした。しかし、講師経験の長い初任者は、教師主導の授業を展開しても新卒者ほど混乱もなく授業を進められる傾向にあるが、授業の目標や問題を明確にする発問以外に、注意や叱責が多くあった。注意や叱責は、児童が学習を受身的に捉えていくことにつながり、その結果児童の発言が極端に少ない授業になる。経験を積んだ教員と初任者の比較では、初任者のほうが授業中の総発問数が多く、発問を意思決定プロセスにあてはめると発問の分散に違いがみられた。初任者は、導入と学習結果の発表での発問数が突出して多く、経験を積んだ教師は意思決定プロセスの各過程にそれぞれに平均的に発問している。初任者の授業中の発問を教科別に分析した結果では、それぞれ得意な教科の授業を例に発問を検討させることを繰り返した結果、各学習過程の発問が分散するようになった。新卒者は、算数を中心に授業研究を進め、発問数の分散が進んだ。講師歴5年の初任者は、理科が得意であることから理科での研修を進め、導入時の発問数が激減した。そして、児童への問いかけや児童の意思を確認する発問が増加した。このことから、小学校教員は、それぞれが得意とする教科での授業研究を進めることの効果が確認できた。
(まとめと課題)本稿では、初任者でも意思決定プロセスの過程にそった発問計画を立てることで児童の意思が授業に反映して混乱のない授業が成立することが確認できた。今後は、発問内容と子どもの応答との関連から更に分析・検討していきたい。