抄録
目的:関東地区会の研究グループでは全国調査のデータを用いて、児童・生徒の生活の自立と共生に関する意欲と実態の関連、親から受ける影響を分析し、今後の家庭科教育カリキュラムや指導方法の改善に資することを目的とした。
方法:全国調査の「家の仕事」の中から自立に関して8項目、共生に関して7項目を選んだ。各項目を子どもの実践の度合いと意欲の関係、「父親による食事の用意」と「母親の就業形態」による子どもへの影響について地区別、性別で比較・分析した。分析対象は関東地区(東京を含む)と全国である。
結果と考察:(1)調査対象者は、全国11,142名、関東地区2,225名である。
15項目のうち「いつもする」と約半数が答えている項目は、「季節や気候にあった服装を自分で決める」「近所の人に挨拶する」の2項目のみである。「パソコンを使って暮らしの情報を集める」以外の項目はすべて女子が男子を上回っている。地区別では関東地区の方がやや高い項目が多い。「父親による食事の用意」は全体的に低いが、関東地区の方がやや高い。「母親の就業形態」はパートが約3割、常勤・無職は2割台で、関東地区と全国の差はほとんどない。
(2)自立の項目で「もっと上手になりたい」という意欲は、食生活では男女共約50%強で高いが、衣生活では男女共に約20%である。意欲と実践度との関係では、男子は食生活の実践度の高い方が意欲があるが、衣生活では実践度との関係は見られない。女子は食生活でも衣生活でも実践度の低い方が意欲がある。情報の活用に関しては男子の方が意欲も実践度も高い。実践度と意欲の関係では、男子は実践度の高い方が意欲的であり、女子は実践度との関係が見られない。
食生活や衣生活の仕事に対する意欲には女子自身のジェンダーが関係していると考えられる。
(3)人との共生の項目で「もっと進んでしたい」という行動意欲は、総じて関東・全国の地区別、男女別にかかわりなく、実践度の高い人ほどある。しかし、意欲的に「子どもの遊び相手」をしたいと思っている人は、他の項目に比べて極端に低い。幼稚園や保育所などでの体験学習を含めた交流の機会と内容の検討が必要であると考えられる。 環境との共生の項目は、概して実践度が低い。ゴミの出し方や電気・水の使い過ぎに対する行動意欲は、実践度の低い人ほど、また男子より女子、全国より関東地区の方が高い。
(4)自立の項目で「父親による食事の用意」が子どもの実践度に与える影響は、比較的容易で困難なく実践できる項目に見られ、女子がやや高くなっている。ある程度技能が必要な項目への影響は低く、男子に顕著である。地区による違いはないと言える。
共生の項目では、挨拶や買い物に父親の行動が関連しているが、地区による違いはなく、やや女子に高い傾向が見られる。環境に関する項目では性別、地区別による違いはなく、父親の行動が実践度に関連しているとは言えない。
(5)母親の就業形態(常勤・無職)が子どもの実践度に与える影響を見ると、自立の「フライパンや鍋を使って料理する」でわずかに違いが見られたものの、その他自立・共生の項目ともに母親の就業形態による違いはほとんど見られない。地区による差も見られない。顕著ではないが、母親の就業形態よりも性別において、子どもの家庭内での実践度に差が見られる。
子どもの行動には、母親の就業形態よりもそれぞれの家庭の方針・考え方の方がより影響を与えていると考えられる。