抄録
【目的】
「食生活」に関わる学習では栄養・食品及び安全・衛生面の知識に加えて調理を実践する技術も必要である。調理の実践は主として調理実習で行われており、実習室の設備や人数、時間等の制約から通常グループで学習する。グループでの学習は、生徒が協力して仕事を進めるという重要性を持つが、限られた回数で行なう実習を生徒側はイベントとして捉える傾向もある。また、調理作業はグループ内で分担して行なわれる為、作業の不平等が生じる可能性等も否定出来ない。更に、材料の選択や購入を含めた作業のすべてを一人の生徒が体験することは難しい状況にある。そこで、生徒一人ひとりの調理技術の向上を図るために、授業内で行う調理実習に加えて、生徒が各家庭において自由献立による調理実習を行なう機会を設け、食に関する知識や習慣等の関わりについても併せて検討を行った。
【対象及び方法】
1)対象:東京都内A区の区立中学校より120名、私立B女子中学校224名、独立行政法人大附属C中学校357名、いずれも1~3年生。
2)方法:レポートによる記名式自由回答法及び質問紙を用いた記名式による集団調査法。調査期間は2002年4月~2003年3月。
レポート課題として、生徒自らが各家庭において献立の作成、材料および調理用具の準備、調理全般、会食、片付け等の食事作りに関する一連の実習を行い、その結果を提出させた。また、食に関する知識、習慣、小学校時に行なった調理実習等について質問紙調査を行った。
【結果及び考察】
1)質問紙調査より、小学校で行なった調理実習の回数は5回と答えた生徒が最も多く、実習の回数は0回から10回以上と大きな幅が認めらた。これは中学校に入って調理実習を行う上での調理用具の使い方や調理の進め方等などに大きく影響を与えると推測される。また、各家庭における食事に関する手伝いの状況では、週に1回以上は手伝いをする答えた生徒が約半数、週に1回以下のペースでなら手伝いをすると答えた生徒が約2割、何もしないと答えた生徒は3割存在した。男女の差は認められなかった。具体的な手伝いの内容も箸ならべ、飲み物の用意、テーブル拭き等が大部分を占め、直接調理に関わる手伝いを行なっている生徒は1割に満たなかった。
2)レポート調査の結果から、家庭における自由献立の品目数の最頻値は3品目であった。調理品目数が増えると献立も複雑になり、調理品目数と調理時間の間には高い相関が認められた。調理品目数及び調理時間について男女の差は認められなかった。
3)まとめ:生徒は日常家庭内においてほとんど調理を実践していない。家庭科の中でも調理実習を行なう回数には学校間の格差が大きい。調理技術を習得・定着させるためには授業内で行なう調理実習の重要性はもとより、いかに家庭等などで調理を実践する機会を与えるのかが検討課題であろう。
授業で行なう調理実習に加えて、家庭内で行った自由献立による調理実習の結果から、調理品目数を多く作った生徒ほど食の知識が高く、食習慣も比較的安定しているという傾向にあることが示唆された。