日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 2
会議情報

第49回大会 口頭発表
アルバイト経験が高校生の生活観に与える影響
グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた質的分析
*荒井 きよみ伊藤 葉子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
 社会から期待されている家庭科における重要課題として、生徒の生活現実につながる視角から生活者としての自立を育むことがある。この生徒の生活現実につながる視角を、ここでは生活観として表していく。前回の研究では、現代社会に生きる若者がどのような視角から生活という営みを実感しているのかを明らかにする目的で、20歳の大学生に面接調査を行ったところ、仕事や金銭といった経済的な要素と彼らが描くライフコースが絡みあった生活観が浮かび上がった。
 このことから、家庭科教育では経済的要素と結びついた生活観を形成し、経済的自立意識を育むことの必要性も示唆される。
 近年、ニートやフリーターなどの非正規雇用者は増加傾向にある。アルバイトに多くの時間を費やしている高校生でも、その経験が将来の展望につながらない現状がある。中・高・大学でのインターンシップの導入等は若者に対する就業支援策として位置づけられるが、アルバイトを含めた就労体験を家庭科の授業と有効に関連させ、展開していくことが重要だと考える。
 そこで本研究では高校生に面接調査を行い、初めてのアルバイト体験が経済的自立意識にはどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。なお高校生の視角により近づき、彼らの生活現実と関連付けながら帰納的に分析していくために、前回と同様に、解釈による意味の探索を重視する質的な方法が適していると思われる。
【方法】
 一定の質問に従い進めながらも、対象者の語りに沿って情報が得ることが可能である半構造化面接を行い、木下康仁の修正版M-GTAを用いて分析する。
対象:高校1年生22名(男子8名・女子14名)
実施時期:2006年9月
聞き取り時間:15~30分
質問項目:1)なぜアルバイトを始めたのか。
      2)初めての給料をもらった時の気持ちはどうだったか。
【結果】
 面接調査からトランスクリプトをおこし、データの切片化はせずに、データの解釈を行った。その際、分析テーマを「働く意義を捉えるまでのプロセス」とし、概念を生成した。本研究における、分析テーマの設定は、経済的自立とは「なぜ働かなくてはならないのか」について一つでも多く自分なりの回答を得た状態になる、と捉えたことに基づいている。
 分析テーマに沿って、対象者データの着目した箇所に関してできるだけ抽象化せずに、概念を抽出した。概念例としては「とりあえずカネ」「劣等感の上塗り」「金の魔力」「将来への伏線」などが挙げられる。
 これらの概念からカテゴリーを生成し、それらの関係性に焦点化して分析した結果、アルバイトをすることが直接、就業意識を高めるのではなく、むしろその周辺の体験が就労意欲を支えていることが明らかになった。金銭を得ることは働く動機にはなりえるが、そこからもう一歩踏み込んだ働く意義を見出せないと職業選択に至る意識のプロセスは構築されない。
 すなわち、アルバイト体験を通して自分の生活の構成要素を捉え直すこと、それらを切り結び、言語化することの重要性が示唆された。その言語化が「なぜ働かなくてはならないのか」について、個々の生徒が多面的な回答をみつけることを促すと考える。
著者関連情報
© 2006 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top