日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 3
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第49回大会 口頭発表
高校生の生活自立能力と他者及び社会との関係性の実態
*島本 美幸鈴木 明子
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抄録

【目的】
家庭科は生活事象全般を直接教育対象とし,中学校では「自己の生活の自立」,高等学校では家族・家庭や地域社会の中で自己を見つめる「自立と共生」という視点から,生活の営みに必要な実践的能力の育成をねらいとしている。しかし,これまでの報告において,生徒を自立へと導くための家庭科の手立ての不足が指摘されている。「生活的自立」を例に挙げると,生活技能の習得だけではなく,実践することへの価値意識を高め,主体性を育むことができるような授業が求められている。
 家庭科教育学会(2001)の調査によると,「とれたボタンをつける」実践は「いつもする」「ときどきする」が30%と低い。対人関係に関する項目では「近所の人にあいさつをする」の実践は「いつもする」「ときどきする」が75%と高いが,小・中学生と比較すると高校生は減少傾向にあることが明らかになっている。この調査によって,家事離れと地域離れという高校生の現状が改めて示唆された。
 本研究ではこのような高校生の特徴に鑑み,衣食住等の日常生活に必要な意識と行動に関する自立(生活的自立)と,家族・友人・地域社会との関係性(関係的自立)の実態をとらえ,相互の関連性を質問紙調査により明らかにし,高校生の自立の実態を捉えるとともに,家庭科の授業方法及びカリキュラム構築への示唆を得ることを目的とした。
【方法】
 「家庭基礎」を履修している広島県の県立高校普通科3校に通う高校生252名を対象に,2006年3月上旬から中旬に質問紙調査を実施した。有効回答数は187名(うち男子103名,女子84名)であった。調査内容は,意識と行動を含む関係的自立に関する項目36項目及び生活的自立に関する項目45項目,「相互独立的―相互強調的自己観尺度」短縮版10項目であった。これらを6段階の評定によって回答してもらった。さらに,調査対象の高校生の家庭科指導を担当する教師に2時間程度の面接を行い,授業及び年間指導計画の実態や指導観等を探った。
【結果】
(1)高校生の生活的自立の実態: 衣服選択,衣服購入以外の項目においては意識と行動に有意な差がみられ,意識はしているが行動が伴っていないことが明らかになった。しかしながら,意識と行動の2項間に比較的高い相関がみられた(=0.615)。
男女ともに食・住生活は高く,衣生活は低いという傾向がみられるが,意識,行動ともに女子より男子の方が低く,「新鮮な食品を選んで買っている」,「食品の表示を見て買っている」等の食に関する行動が有意に低いことが明らかになった。
生活的自立に関する質問項目の因子分析によって,「食・住まうことに関する意識」等の7因子が抽出された。
(2)高校生の関係的自立の実態:家族・友人・地域社会との関係性については,意識に比べて行動が低いことがわかった。また友人に対する項目は意識・行動ともに他の項目よりもやや高く,すべての項目で肯定的な回答の合計が70%を超えた。次いで家族,地域社会の順に低くなる傾向がみられた。地域社会との関係性に関する項目について男女の差はあまりみられないがその他の項目は女子よりも男子の方が低いことが明らかになった。
関係的自立に関する質問項目の因子分析によって,「家族との関係性」等の7因子が抽出された。
(3)生活的自立と関係的自立の関連性:今回の調査における生活的自立に関する項目と関係的自立に関する項目の各々の合計得点を算出し相関分析を行った結果,比較的高い相関があることが明らかになった(=0.644)。また,男子よりも女子の方が高い相関がみられた(男子=0.578,女子=0.635)。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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