日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
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第49回大会 口頭発表
男女共同参画社会に向けた家庭科教育の課題
高校生の生活意識・実態調査からの考察
*堀内 かおる
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抄録

【目的】
 男女共同参画社会の推進が図られるようになって久しく、家庭生活や家事労働についても男女が共同で参画することが望まれている。家庭科の学習指導要領には「男女共同参画社会の推進」を視野に入れた教育の必要性が述べられ、教科の内容においても固定的な性別役割を見直す学習が取り入れられてきた。しかしその一方で、家庭科教育に対する社会的な理解が十分に浸透していないために、近年「ジェンダー」概念をめぐる論議があり、家庭科教科書の記述が注目された。このような状況にあって、家庭科教育を通して、男女共同参画の理念と家庭科の意義についての正しい理解を促す必要がある。
 そこで本研究では、社会に出て自立する時期が近づき将来の男女共同参画社会の担い手となることが期待される高校生に焦点を当て、生徒たちの自己意識や家事参加の実態と将来の家庭生活における役割分担に対する意識を明らかにする。その上で、今後の男女共同参画社会実現に向けた家庭科教育の課題について提起することを目的とする。
【方法】
 2005年10月から2006年2月にかけて、高校生の家庭生活と家庭科観に関する質問紙調査を実施した。調査対象は、首都圏の公立・私立高校合計9校の生徒1549名(男子787名、女子762名)である。各校の家庭科教師を通じて調査票を配布し、留置きによる自記式で調査を実施した。有効回収率は、88.5%であった。
【結果および考察】
 高校生は「マイペース」「明るい」「負けず嫌い」と自分の性格をとらえており、男女とも同様の傾向であった。他方、友人とのつきあいに気を使い、「本当はしたくないことでも同性の友人に合わせる」という回答が男女ともに過半数を占めていた。男子は「異性の友人とのつきあいに気を使う」と回答した者が8割を超えていた。また、男女とも8割を超える生徒たちが「もっとこういう自分だったらいいのに」と思っており、「もっとこうだといい自分」としてあげられていたのは第1に「人に誇れるものを持った自分」、第2に「顔立ちがかわいい・かっこいい・きれいな自分」であった。
 以上のような自己意識を持つ高校生にとって、「理想の恋人」像としてあげられたのは、男子では「かわいい」「よく気がつく」「何でも対等に話ができる」相手であり、女子では「優しい」「何でも対等に話ができる」「頼りがいがある」相手であった。しかし「理想の結婚相手」としてあげられていたのは、男子では第1に「家事ができる」相手であり、女子では第1に「経済力がある」相手であった。
 また、高校生の現在および将来の家事への関与については、現在男子は「全然しない」という回答が最多であり、女子は「時々する」ことが多かった。将来はほとんどの家事について「夫婦で同じずつ」やるべきだと生徒たちは回答していたが、「食事の支度」「選択」は「主に妻」が担うと回答していた。
 以上のような結果から、生徒たちは今の時代は男女で共に家庭生活を担っていくべきだと思っていることがわかった。しかしその反面、結婚相手に対する伝統的性別役割分担への期待が伺われ、現状においても女子の方が家事を行っていた。
 社会的にも男女共同参画に向けての過渡期である現在、生徒には対等な男女のパートナーシップを求めると同時に性別役割をも相手に期待するという、相反する意識が見られた。さらに家庭での家事経験の少なさから、将来家事を「夫婦で同じずつ」担うということを実感として理解できていないからこそ、理念先行で平等な分担を支持したとも考えられる。
 加えて、生徒たちは自らを「社会の一員」であるととらえる意識が低かったことも他の項目に対する回答から明らかになった。生徒たちの意識に散見される以上のような矛盾を社会問題とのつながりで指摘し、生活を営むということを自分自身の問題として自覚的にとらえ、実践力をつける学習を家庭科で行っていく必要性がある。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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