日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 4
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第49回大会 口頭発表
家庭科教育における自己実現と経済的自立に関する研究
-大学生の認識と実態から-
*志村 結美
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抄録

【目的】
   高等学校家庭科教育では、自己実現をめざした主体的な生活者を育成することが主要な目標となっている。主体的な生活を創造するためには、経済的自立とそれを支える職業生活の充実が欠かせない。シュプランガー(E.Spranger)は、青年の心理的全体特徴の1つに生活設計ができることを挙げ、コール(L.Cole)は、青年期の9つの目標に職業の選択、人生観の定立等を挙げている。また、ハヴィガースト(R.J.Havighust)は、青年期の10の発達課題として、経済的な独立について自信をもつこと、職業を選択し準備すること等を挙げている。
 一方、現在の青少年は、未来志向から刹那的な現在享楽志向へ移行しており、自己実現をめざすための生活設計を抽象的にしか捉えられず、将来的展望が希薄であると指摘されている。将来的展望と進路決定自己効力には関連性があり、将来的展望の希薄さは、進路選択、職業選択の場に具体的にあらわれ、高校卒業後の無業者層の増加、早期離職者の増加等、高校教育内部にとどまらず、労働市場、経済と深く関連している。若年失業者一般の問題は社会秩序や個人のライフコース、家族の問題にも影響を与え、パラサイトシングルの増加、ニートの増加等、青年期の経済的自立や精神的自立の遅れとも深く関連しながら社会問題となっている。 
 そこで、本研究は、自己実現をめざして将来的展望を持ち、自立して生きる人間の形成を期待し、高校生の自己実現、経済的自立及び職業生活を始めるための準備意識、すなわち職業レディネスに関する認識を向上させるために、高等学校家庭科教育において求められる適切な教育内容を明らかにし、カリキュラムの構想への提言を行うことを目的とし、一連の研究を行うこととした。
 すでに、既報において、高校生の自己実現、経済的自立及び職業レディネスに関する実態と高等学校家庭科教育の現状に関する基礎的知見を報告している。そこで、本報では、高校生の特徴をより明確に把握し、高等学校家庭科に関する教育内容の整理・再構成に対する示唆を得るために、法律的にも社会的にも成人と見なされ、高校生の調査結果において多くの高校生が精神的自立の時期として捉えている20歳前後の大学生の自己実現、経済的自立及び職業レディネスの認識と実態を明らかにすることを目的とする。
【方法】
 調査対象は、20歳前後の国立大学の大学生男子169名、女子312名、計481名であり、有効回答率は100%、調査期間は2005年11月である。調査内容は自己実現、経済的自立及び職業レディネスに関する項目で、高校生に対して行った調査項目を基本として設定した。
【結果】 
 大学生の調査を分析した結果は以下の通りである。
 社会のルールを遵守し、共生社会を自らの力で構築していきたい、社会に役立つ人になりたいという意欲があり、向上心を持っているにもかかわらず、具体的な将来的展望を描くことができず、自己肯定感が低く、主体的問題解決力や発言力が低いと認識している傾向が認められた。また、保護者等からの経済的自立意欲を持ち、社会人として経済的な社会の責任を担うことに肯定的である一方、具体的な経済観念や家計管理行動、消費者問題に関する認識等が低いことが認められた。職業レディネスに関しては、やりがいのある仕事を重視し、主体的な職業選択をすることを望んでいるが、未だ就職に必要な具体的な条件を把握していない等の様相が明らかになったが、性別による大きな違いは認められなかった。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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