抄録
【研究目的】
計画したことがスムースに流れることを前提に教師は授業を行うが、児童の集中力の途切れた瞬間、学習意欲が落ちた瞬間を問題発生場面と定義し、その原因を分析した属*)は以下の5つをあげている。(1)教師や児童、(2)指示、(3)発問、(4)掲示物、(5)配付資料や道具、学習プリント等である。本報告では、(2)と(3)の場合に限定して問題発生場面でその阻害要件を取り除き、またもとの流れに戻そうとする行為としての「授業の立て直し」にポイントを絞る。その場合、「立て直し」の指示はどのような時に成功し、どのような時に成功しないかを明らかにしようとするのが本報告の目的である。
【研究対象及び方法】
授業中における問題発生場面の立て直しに関する事例分析を行うための検討対象は、5.6年の家庭科の授業である。そのため1年間にわたる授業観察をおこなった。抽出された授業をストップモーション方式で記録し、分析した。
【結果と考察】
まず、問題発生場面を教師が気づくか気づかないかに分けた。
気づかなければ「立て直し」の指示はありえない。気づくことがまず必要である。
次いで気づいた場合、「立て直しの指示」をするかしないかに分けられた。「立て直しの」指示をしないで諦める場合もあった。
はじめの指示が適切でないことに教師が気づいた場合や、はじめの指示が有効でなくて事態が進行している場合、教師は「立て直し」の指示を諦めることがある。諦めたことによって、立て直しはできなかった。
立て直しができた事例は、「立て直し」の指示をした結果、それが成功したものに限られる。
成功した事例としては、まず、「臨機応変な対応」があげられる。教師にとっては判断するために十分な時間が必要とされるような場面でも、問題発生場面では「瞬時」が重要である。そのさい、教師の指示は「言い切る」形が有効である。
さらに、前もって設定してあった「約束事」が生きた事例がある。「調理実習の時、『ちょっと話聞いて!』と言ったら、何をしていてもピっと集中する」という約束事が教師と児童との間にできていた。それを普段の授業のなかで『ちょっと話聞いて!』と調理実習の時と同じ口調で指示したことが有効であったなどを指している。
立て直しをしようとして立て直しができなかった事例は、教師の側からの無理な方向付けによって、さらに混乱を加えたものがまずあげられる。はじめの発問のさいに「どうでしょう」などという抽象的な発問をした時に出てくる問題である。当然のことながら、何を聞かれたのか分かりにくいため教室はざわついている。しかも、児童からの答えは教師の意図したものではない。さらに、前もって児童から引き出したい答えが出るまで教師は誘導発問を繰り返すという場合である。
もう一つは、有効でない注意である。有効な立て直しの反対の場面であるが、約束事をしっかりしておかなかったため、注意事項が有効でなかった場合である。
今後、属が分析した問題発生場面と、今回分析した立て直しの場面とを合わせて考察したいと考える。
*)属 千佳子 授業を成立させるための工夫-家庭科について-福岡教育大学平成16年度卒業論文