日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 40
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第49回大会 口頭発表
「高齢者の生活と福祉」の学習に異世代交流活動を取り入れる意義に関する実践的研究
*小川 裕子久保田 詔子矢代 哲子
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抄録

【研究目的】
 「高齢者の生活と福祉」の授業実践報告を見ると、高校生が高齢期を自分の問題として把握しにくいなど、指導上の困難が多々あることが指摘されている。また、高齢者に対する関心を高めるために、様々な体験活動が実施されてはいるが、擬似体験や行事として実施する場合が多く、検討が必要である。題材「高齢者の生活と福祉」の学習に関わらせて異世代である高齢者との交流活動を独自に企画実施し、その意義について明らかにすることを目的とした。
【研究方法】
 まず過去10年間の家庭科教育関係雑誌に掲載された既存の異世代交流活動実践を収集し検討する。それを踏まえて新たに異世代交流活動を企画し、それを題材「高齢者の生活と福祉」の学習の直前に実施した。実施した交流活動の意義を明らかにするため、高校生については、交流活動の事前と事後に行う高齢者との関わりや意識についての調査や交流活動直後の感想文、授業中のワークシートや題材学習後の感想文を資料として収集し、1学級集団として、また1人1人にとっての学習の深まりを分析、考察した。交流を行ったもう1つの世代である高齢者についても、交流活動の事前調査や交流活動直後に行った座談会の記録、交流活動の感想文を資料として収集し、交流活動の意義について検討した。
【研究結果】
(1) 異世代交流活動の概要
 異世代交流活動は、地元の高齢者のグループ(地区社会福祉推進協議会)に協力をお願いして、生活文化に関わることで自らの得意とするもの中から作るものを決定してもらい、それを高等学校で生徒に教えてもらうという活動内容とした。制作物は、布で作る花、竹とんぼ、お手玉、巾着袋、亀のキーホルダーの5種となった。交流活動は2週間の期間をあけて2回行い、家庭科の「高齢者の生活と福祉」の学習に導入として実施した。
(2) 高校生の異世代交流活動による学習の深まり
 集団として観た場合、まず、交流活動直後の感想文における記述内容に注目した結果、「高齢者について」「高齢者の教え方について」「教わった内容について」「交流活動についての生徒自身の思い」の4つに分類された。1回目には「高齢者について」が最も多かったが、2回目になると「交流活動についての生徒自身の思い」が多くなった。次に、交流活動を行った「高齢者の生活と福祉」における学習の深まりに注目し、現行の指導要録における「家庭」の4つの評価の観点を活用し、検討した。その結果、「関心・意欲・態度」や「技能・表現」に該当する記述については2回目の交流活動直後の感想文に、「思考・判断」「知識・理解」に該当する記述は題材学習後の感想文に頻出することが認められた。個人の学習の深まりについては、一例を挙げると、普段高齢者とほとんど関わりがない生徒の場合、題材の学習で様々な高齢者についての実態を学んだ後で、交流した元気な高齢者を思い出し、彼らのように生きがいを持ち、生き生きと高齢期を過ごしたいと自分の高齢期について考えを深めることができた。高校生は、2回の交流活動で高齢者に対する関心が深まり、高齢者との関わり方を理解して、その後の題材「高齢者の生活と福祉」の授業に意欲をもって取り組むことができた。
(3) 高齢者にとっての交流活動の意義
 交流活動直後の座談会や感想文により、高校生に好感をもち、高校生の現状を知ることができていた。交流活動では、事前の準備が大変だったと思われるが、充実した時間を過ごし、やりがいを感じたなど、高齢者にとっての生きがいにもつながっていた。今後は、交流会の企画への参加や活動後の振り返りの場が重要と考えられる。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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