抄録
【目的】
少子高齢化の進行にともない、夫婦のみ、一人暮らしの高齢者世帯が急速に増加し、3世代世帯の割合は減少している。さらに、個人志向が高まり、年老いた両親を扶養しようとする意識が薄れている。また、高齢者の社会的支援には世代間扶養が必要であるにもかかわらず、ネガティブな高齢者イメージを抱く若者が多い。世代間交流が希薄であることが原因の一つと考えられる。
一方、職業を継続しながら子どもを生み育てるが女性が増加しているが、保育所や育児支援者の派遣など、育児支援はいまだ十分ではない。親族ネットワークに頼るところが大きく、祖父母の孫育て、および高齢者による育児支援は重要になってきている。戦後のベビーブーム世代が一挙に退職を迎える現在、祖父母世代、高齢者の子育てへの関与が期待される。
そこで本研究は、孫世代を対象とする、祖父母との関係に関する質問紙調査により、1.居住形態の違いが祖父母と孫との関係に及ぼす影響、2.祖父母と孫との交流が子どもの祖父母イメージに及ぼす影響、および3.祖父母と孫との交流が子どもの成長発達に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。
【方法】
2004年6月から7月に質問紙調査を実施した。調査対象は、福井県の小学校の3・4・5・6年生279名、および京都市内の大学に通う女子大学生211名、計490名である。いずれも授業担当の教師に依頼し、授業時間を利用して調査を行った。調査内容は、1.祖父母との交流(祖父母からの働きかけ・教育)、2.孫の祖父母に対するイメージ、3.孫の成長発達度の3つに分類することができる。
小学生279名のうち、3年生は59名(21.1%)、4年生は74名(26.5%)、5年生は81名(29.0%)、6年生は65名(23.3%)、男女の比率は男子139名(49.8%)、女子140名(50.2%)である。女子大学生211名のうち、1年生が90名(42.7)、3年生が118名(55.9%)、4年生が3名(1.4%)である。大学生の出身地は、62.6%が近畿地方であった。
【結果】
1)小学生は、拡大家族が55.2%、核家族が39.8%であった。大学生は拡大家族が35.1%、核家族が56.9%であった。小学生・大学生のいずれも、同居しているのは、父方の祖母がもっとも多く、次いで、父方の祖父、母方の祖母、母方の祖父の順であった。別居する祖父母と会う頻度は、小学生は、毎週会う者が42.4%、月に数回34.7%、年に数回16.9%、大学生は、毎週13.1%、月に数回23.8%、年に数回50.8%であり、小学生よりもかなり頻度が低かった。
2)対象者を「同居」「毎週会う」「月に数回」「年に数回」「ほとんど会わない」の5グループに分け、「祖父母から孫への働きかけ」「祖父母から孫への教育」とのχ二乗検定によるクロス検定集計をおこなった結果、有意差は認められなかった。居住形態は、祖父母と孫との交流に影響を及ぼしていないことが明らかとなった。
3)祖父母イメージは、全体的に、大学生よりも、小学生の方がポジティブであった。小学生、大学生ともに、祖父母から孫への働きかけの頻度が高いグループほど、高齢者に対するポジティブイメージが高いことが明らかとなった(小学生:p=0、大学生:p=0)。
4)小学生、大学生ともに、祖父母から孫への働きかけの頻度の高いグループほど、孫の成長発達度が高いことが明らかとなった(小学生:p=0、大学生:p=0.02)。
5)祖父母からの教育に関しては、道徳的な項目に関しては、約半数の孫が祖父母から言われることがあると答えているが、身の回りの整理や家事労働など、日常的な項目については、祖父母から教育される孫は少なかった。大学生の祖父母からの教育の頻度が低いグループは、成長発達度が低いことが明らかになった(p=0.38)。