抄録
【目的】
本研究は,今次の高等学校学習指導要領に示された必修家庭科各科目の内容の重要度について,家庭科教員等の意識を調査するとともに,配当授業時数などの実態を把握し,家庭科の次期改訂の方向性を探ることを目的としている。
【方法】
全国の家庭科教員,家庭科出身の校長・教頭・指導主事(以下,管理職とする)を対象に,「家庭基礎」,「家庭総合」及び「生活技術」の各項目・指導事項(一部は解説書レベル)ごとの重要度,配当授業時数(教員のみ),各科目に関する意見等を内容とする自記入式のアンケート調査を実施した。調査時期は,2005年2月_から_4月。有効回答数は,645(教員406,管理職206),有効回答率は92.5%であった。重要度は,5段階で点数化し,統計解析ソフトSPSS11.5Jを用いて分析した。統計的な有意差の検定には,χ2検定を用いた。
【結果】
1)「家庭基礎」の内容で重要度の高いものは,「(ア)家族の栄養と食事」,「(イ)親の役割と保育」,「(イ)食品と調理」,「(ウ)食生活の安全と衛生」,「(ウ)消費者の権利と責任」である。一方,得点が低いのは,低い順に,「(ア)家族の生活と住居」,「(ア)被服の機能と着装」,「(イ)住生活と健康・安全」,「(ウ)生活設計」,「(ア)生涯発達と各ライフステージの特徴」である。
2)「家庭基礎」の重要度で教員と管理職間で有意差がみられるのは以下の通り。p<0.01:「(ア)生涯発達と各ライフステージの特徴」,「(イ)食品と調理」,「(4)HPと学校家庭クラブ活動」。p<0.05:「(ア)乳幼児の心身の発達と生活」,「(ア)高齢者の心身の特徴と生活」。
3)「家庭基礎」の重要度で年代によって有意差がみられるのは以下の通り。p<0.001:「(ア)乳幼児の心身の発達と生活」。p<0.05:「(ア)生涯発達と各ライフステージの特徴」,「(ア)家族の栄養と食事」。
4)「家庭総合」の内容で重要度の高いものは,「(イ)栄養と食事」,「イ親の役割と保育」,「(ウ)食品と調理」,「ウ消費者の権利と責任」,「(エ)食生活の管理」,「ウ消費行動と資源・環境」である。一方,得点が低いのは,低い順に,「(イ)住空間の計画」,「エ生活文化の伝承と創造(ア)(イ)」,「(ウ)被服の構成と製作」,「(ア)住居の機能」などである。
5)「家庭総合」の重要度で教員と管理職間で有意差がみられるのは以下の通り。p<0.001:「ア高齢者の心身の特徴と生活」,「ウ高齢者の介護の基礎」,「(エ)食生活の管理」,「(6)HP」。p<0.01:「ア人の一生と発達課題」,「(イ)栄養と食事」,「(ウ)食品と調理」。p<0.05:「ウ生活設計」,「ア子どもの発達」,「(イ)生活文化の伝承と創造」。
6)「家庭総合」の重要度についても,年代による差が多くみられる。
7)「生活技術」の内容で重要度の高いものは,「(イ)親の役割と保育」,「イ食品と調理」,「ア食生活と栄養」,「ウ食生活の管理」,「(ウ)消費者の権利と責任」,「(ア)乳幼児の心身の発達と生活」,「(ア)高齢者の心身の特徴と生活」,「(イ)家庭の機能と家族」である。一方,得点が低いのは,「エ生活と園芸」,「(3)家庭生活と技術革新」,「イ設計とインテリア」,「ウ住生活の管理」,「ア家族と住居」である。
8)配当授業時数については,担当教員による差が大きい。最も多くの時間を配当しているのは,3科目共に食生活であり,次いで,衣生活,発達と保育,消費生活,家族・家庭の順になっている。
9)「家庭基礎」に対しては,「内容が網羅的で,2単位では,教科の特質を生かした授業を行うことが困難である。他教科や中学校の内容との重複を見直し,思い切って精選を図る必要がある。」など,2単位科目の指導の困難さが多く指摘されている。
10)「家庭総合」に対しては,保育や高齢者の外部への実習が,1クラス単位では実施困難であることや班別指導の要望が記されていた。