日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: P-2
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第49回大会 ポスター発表
生活力認識から見た家庭科教育の課題
*室 雅子上野 顕子小川 裕子吉原 崇恵
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抄録

【目的】
 教育による「生きる力」の育成が強調される今日に逆行し、家庭科授業時数は削減の傾向がみられ「生活者として生きていく力(生活力)」の育成の場が失われていると言える。また家庭科がその担い手であるというイメージが薄いことも示しているといえよう。本研究では育成すべき生活力と家庭科教育の有効性を明らかにすることを目的とし、今回は第1段階として、人々が生活力として身につけたいと求めている事項とその知識源における家庭科との関係を明らかにする調査を行った。本調査では、従来の家庭科を捉える概念としての衣、食、住、家族、保育、経済等に加え、人間関係や体(性問題も含む)を取り入れたこと、問題、行動、情報収集意欲、情報源に関して、個人と社会の2つの立場から同問題を回答してもらうこと、世代分けを家庭科の履修形態別に分けたことが新しい視点である。

【方法】
 以下の概要による調査を実施し、記述を分析した。
調査対象:計47名。
大学生32名(男8・女24、小中高男女共修)+社会人15名(男6・女9、小中のみ男女/小のみ男女共修)
調査方法:無記名自記式による質問紙調査。記述式(一部を除く)。
調査時期:2005年7~8月
設問内容:
(1) 生活力を、食、衣、住、人間関係、子育て・介護、心・体・自己管理、性・男女交際、仕事・労働、お金・経済、将来の生活設計、環境・資源、情報・インターネット、その他の13項目に分け、「生活の中で悩んでいる、困っている、問題だと思うこと」「そのためにやっている(いた)こと」「そのためにもっと知りたいこと、できるようになりたいこと」を“個人”と“社会”の2立場から回答
(2) (1)と同じ内容について、「今の時代を子どもたちが生きていく上で必要な力」は何か、その力を養うべき場所(家庭、学校、地域、他)
(3) 小中高家庭科で学んで生活に役立っていること、家庭科で学びたかったこと

【結果】
(1) [1]全回答者において、全ての内容に個人・社会的立場共に少なからぬ課題を持っていた。
<個人レベル>の課題は次の4つに分類された。
A)家庭科での既習知識がある為問題と認識し改善を図ろうとしている課題
B)家庭科での既習知識があり問題認識もあるが改善できない課題
C)現在家庭科では諸事情で一部しか扱っていないと思われる課題
D)家庭科で習ったはずだが定着していないための課題
 <社会レベル>でみられた課題は、個人では解決できない問題があがり、必ずしも個人とは同じ課題内容ではなかった(自分の家庭には無いが公共的によくないと思う行動・現象等)。また家庭科で扱う内容の課題だが、一部の学校や短時間しか深く扱われていないと思われる課題(年金の仕組み等)も挙げられた。いずれの課題も、解決法としての情報源は雑誌やテレビなどがあげられるか無記入であり、学校や家庭科での既習認識はあまりみられなかった。
(2) [1](1)と異なり、回答者個人がではなく「子どもに必要な力」は何か、というように各内容について尋ねると、各内容に共通して「自分で判断・創造・理解できる力」、「他者・他の立場の者を思いやる力」、「○○を大切にする力」が挙げられた。
[2]力を養うべき場所としては、内容によって家庭、学校、地域に分かれたが、家庭科が挙げられたのは、食、衣、住、子育て・介護、お金・経済であり、家庭科の必要性を認めていると推察される回答者は自己管理、性・男女、仕事・労働などにも家庭科をあげていたが、他の者は保健体育や職業体験、社会科、理科、生活科など必ずしも家庭科の内容ではないとの認識された項目もあった。
[3]特に男女共修世代ではない男性の回答には、食と衣以外の内容における家庭科での既習認識はみられなかった。
(3)<家庭科で学んで役立っていること>全般に調理や裁縫技術関連が多いが、大学生では保育や育児、性、消費者等も挙げられた。<家庭科で学びたかったこと>大学生以上の意見ではさらなる衣食住や家族、人生設計、経済など現在の家庭科では扱っていると思われる内容への学習希望があがっていた。

 以上より、家庭科でつける力や知識は各世代ともある程度定着しており、また若い世代ほど幅広くとらえられているものの、実生活への応用力不足や既存の知識が家庭科の成果という認識が少ないことが分かり、今後の家庭科での生活力育成の課題を得た。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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