日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第49回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 5
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第49回大会 口頭発表
家庭に関する専門学科における日本版デュアルシステムの検討(第1報)
―ドイツの実情とわが国の現状―
*諸岡 浩子山本 奈美長石 啓子高木 弘子渡邉 照美福田 公子
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抄録

【目的】
 若年者の職業的環境の変化に伴い、専門高校をはじめ学校教育における職業教育の根本的な見直しが迫られている。平成15年6月に内閣府は「若者自立・挑戦プラン」の施策の一環として、「実務・教育連結型人材育成システム(日本版デュアルシステム)」の導入を掲げている。この構想は、ドイツ職業教育・訓練制度のデュアルシステムをモデルにしたものであるが、日本的な改変を強く示唆している。そこで本報告では、ドイツのデュアルシステムの概要と今日的課題を明らかにし、日本版デュアルシステムの在り方について考察し、高校の「家庭」に関する専門学科におけるデュアルシステムの可能性について検討することを目的とした。
【方法】
 まず始めに、ドイツのデュアルシステムについて、連邦および諸州教育省の刊行物および文献調査から、ドイツのデュアルシステムの歴史的変遷と今日的課題について明らかにし、日本版デュアルシステムの構築への示唆を得た。
 次に、すでに公表されている「専門高校等における『日本版デュアルシステム』に関する調査研究協力者会議」報告書等の審議会報告を検討した。さらに文部科学省から「日本版デュアルシステム」推進地域の指定校を受け、専門学科「家庭」を設置しているB高校の教員に聞き取り調査を行った。時期は平成17年3月である。
【結果】
 日本がモデルとしているドイツのデュアルシステムは、中世の徒弟訓練に起源があり、マイスターの社会的地位が高いことが背景にある。教育の場としての学校と職業訓練の場としての企業等との、相互の連携体制が確立し、役割が明確になっている。しかしながら、科学技術の進歩による職業的環境の変化に伴い、今日のデュアルシステムの必要性についてはドイツ国内で論議されている。このドイツの抱える実情は、学校教育でのデュアルシステムの位置づけを、日本版デュアルシステムの導入において明確にする必要があることを示唆している。
 「専門高校等における『日本版デュアルシステム』に関する調査研究協力者会議」が全国の専門高校等769校を対象に行ったアンケート調査(平成16年)によると、「『日本版デュアルシステム』実施に賛成である」の学校は47%、「反対である」の学校は6.1%で受け入れられる傾向である。また、形態と期間については、「一ヶ月程度の、まとまった期間に実施する」が42.9%と最も多く、教育課程上の位置づけは、「専門科目の実習として実施」という答えが41.3%と最も多かった。多くの学校は、日本版デュアルシステムが長期の企業実習を通じて、生徒が実践的な職業知識と技能を身につけることを期待していると考えられる。
 現在、日本版デュアルシステム推進事業は、研究開発の段階である。そのため、文部科学省は平成16年度から研究指定を推進している。その中のA地域B校の専門学科「家庭」の教員への聞き取り調査を行った。B校では、デュアルシステムを必履修の科目として教育課程に位置づけているが、現在開発途中である。今年度、3年次に4月から8月までの期間に、週1日全日の実習を行うことで、3年間を通してのカリキュラムが一通り完成する。1・2年次には、職業意識の向上のためにインターシップを行った。生徒の中には職業技能の向上のために資格取得を目指す者も出たという成果が得られた。一方で教員は、生徒が実習を希望する職業の中には、デュアルシステムの職種としてふさわしいかどうかという疑問を持っていることが分かった。そのため、専門学科「家庭」が直結していると考えられる生活関連産業各分野で、求められる資質と職業能力について検討する必要がある。
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© 2006 日本家庭科教育学会
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