抄録
【研究の目的】
平成元年告示の高等学校習指導要領を受けて、家庭科男女必修は今年で早20年目を迎える。その節目にあたり、家庭科男女必修と非必修世代の「社会観」「家庭観」を探ることにより、家庭科の教育的効果を検討することを目的とした。これまでに、家庭科男女必修の教育成果について数多くの調査がなされているが、「社会観」・「家庭観」についての調査はまだなされていない。
【方法】
量的調査としてのアンケートと質的調査としての聞き取りを行った。
(1) アンケート調査
実施日は2007年5月~10月で、調査対象は新潟J大学生、大阪府・岡山県を中心とする10代~70代の成人男女(総計711人、男子284人女子427人)である。質問項目は、「社会観」25項目(5段階評価)、「家庭観」15項目(5段階評価)で構成し、因子分析、分散分析等を行った。有効回答率は88%(711人)。統計処理にはSPSS12.0等を用いて因子分析を行った。
(2) 聞き取り調査
アンケート調査をより明確に把握するため、男女必修世代を対象に聞き取り調査を行った。実施日は2007年10月、対象者は新潟J大学生・大学院生の計10人(男子4人、女子6人)で、半構成インタビュー法にて一人30分程度で行った。
【結果と考察】
(1)アンケート調査
1)「社会観」
因子分析の結果、「感性・娯楽重視志向」、「個人的革新志向」、「伝統・性別役割志向」、「社会的革新志向」、「高齢者扶養志向」の5因子が抽出された。家庭科男女必修世代は非必修世代よりも、政治・社会問題を考えるよりレジャーやスポーツを楽しみ、個人の生活を大切にし、伝統に縛られない生き方の傾向がみられた。一方で非必修世代は家庭科男女必修世代よりも、伝統重視し性別役割を意識する傾向にあり、若い世代より社会に対して革新的な傾向を持ち、高齢者扶養に対して意識が高いことがわかった。
2)「家庭観」
因子分析の結果、「性別役割志向」、「個人主義志向」、「協力共同関係志向」の3因子が抽出された。家庭科男女必修は、非必修世代よりも男女平等観は高かった。また、非必修世代は、自分の家族のことを外に言わない傾向にあり、近隣付き合いを気にするなど、人とのつながりを重視している。家庭科男女必修の10代・20代は、男女が協力して家庭生活を築いていくことや、生活に必要な知識や技能を育てることを目標とした家庭科教育を受けているが、今回の調査結果では、家庭科男女必修世代の方が男女平等意識は高く、これらは家庭科教育の効果とも考えられる。
(2)聞き取り調査
性別役割については、家族の扶養には男性の方が保守的な傾向が見られ、共同関係については、男女とも意識が高い傾向が見られた。高齢者扶養については、まだ若い世代では実感が伴わないことが示された。「家庭観」については、男女必修家庭科の授業効果を期待していたが、家庭環境・教育から学んだと回答しており、学校での家庭科の授業効果というより家庭環境や社会情勢・マスコミなどの影響の結果が示された。しかしながら、回答には矛盾が見られた。例えば、家庭科の授業で学んだことが生活上に役立っていると、対象者のほぼ全員が答えた。また、家庭科で学んだ印象は「実習が一番強い」と回答している反面、「講義内容も役に立っている」とも回答していた。このような矛盾した回答が示すように、家庭科は無意識の中に印象的に働きかけている教科ではないかと考えられる。
【まとめ】
「社会観」・「家庭観」については、男女が共に学ぶ家庭科教育の効果があったと考えられる。しかしながら、家庭環境や社会情勢・マスコミなどからも強く影響も受けているので、家庭科教育だけの影響とは一概には判断することは難しい。