抄録
<目的>
第1報で構想した共同作業およびその記録を活用した家庭科授業における学習者の学びについて、実践カードに記された保護者の追加コメントおよび他の学習者との関連に着目しながら、その実態を明らかにすることを目的とする。
<方法>
本時「家族とのかかわりを考える」を2008年3月19日に実施し、ビデオカメラとICレコーダーで記録した。それをもとに、作成したプロトコルおよび共同作業の過程を記録した実践カード、授業時の学習プリントの記述内容について分析した。対象者は1報と同じである。
<結果および考察>
1. 学習者の参加状況の変化
授業開始当初、保護者の追加コメントが示される前の場面では、学習者が目を向け、「実践カードから考えたこと」として自由記述していたのは、共同作業者との関係よりむしろ作業内容やその感想についてであった。そのため、手元に実践カードがない学習者のなかには、授業への参加ができていないものも見られた。
しかし、保護者の「さぼらんよ~」や「早くせんと終わらんよ。」、「なにが寒いとね、野球する時は寒いと思わんやろ~」など、学習者に対する本音が含まれた追加コメントを示した場面では、学習者が身を乗り出したり、立ち上がったりして黒板に注目するなど、学習への積極的な参加態度が見られ始めた。
実践カードへの保護者からの追加コメントがなかった学習者もいたが、他の保護者によるコメントが、どの家庭でもよく聞かれるようなリアリティーのある内容であったため、それらを聞くことによってコメントをもらえなかった学習者も 他の保護者のコメントに対して、反応していた。
2. 本音の表出
保護者の追加コメントに対して、学習者の側も「うるさい。わかってる。」、「お母さんがすればいいがね。」、「ウザッ!黙っちょったら、すぐ終わるし!」など、教師の支援を受けながら、次々に本音を出していた。
それらは実践カードに記述された学習者の発話や思いよりも感情的ではあったが、実感のこもった記述や発表であった。それらのほとんどは作業内容に対してというよりむしろ、追加コメントをした保護者、すなわち共同作業者に対する反感や共感などであった。
また、保護者の追加コメントを学習者に個別に示した場面では、自分の親に対して反感を持ちつつもその一方で同感するなど、葛藤が生じている学習者の姿も見られた。
3. 他の学習者による共感的受容
一方、保護者の追加コメントに刺激されつつも自分の本音を全体の場で発表することを躊躇していた学習者もみられたが、発表場面では学習者間に共感が広がっており、他の学習者との関係を確かめつつ、最終的には発表していた。
4. 多角的視点の提示と参加意欲の持続
学習者に対する注文や小言などの保護者の追加コメント提示した後の、教師が保護者の感謝や嬉しさなど肯定的なコメントも示した場面においても、学習者は体ごと黒板の方に向きを変えたり、背伸びをしたりして注目するなど高い関心を示し、参加意欲を持続していた。