日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: A2-6
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口頭発表
小学校家庭科におけるロールプレイングを用いた授業が児童の自尊感情に与える影響
*正保 正惠林原 慎伊藤 圭子
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抄録
【背景・目的】
昨年度の大会において、新指導要領に表記された「家庭生活を大切にする心情」をどう育むか、について家庭科の価値論的な論考と、台湾の家族生活教育で用いられているロールプレイングという方法について発表を行った。また、西敦子ら(2006)の研究等では、小学生の自尊感情がアサーショントレーニングで高まることが示されている。本報告は、我が国の小学校家庭科において、ロールプレイングを用いて「家庭生活を大切にする心情」を育むということを具体的にはアサーティブなコミュニケーションによって自尊感情(家族)を高めるととらえ、どのようなタイプの児童に効果的なのかを研究授業と事前・事後テスト、家庭へのアンケートを実施して実践的に影響を測定することを目的とする。
【方法】
方法として、(1)家族とのコミュニケーションを改善することをめざすロールプレイングの授業(アサーティブな態度を身につけさせる授業・広島県内M小学校5年生2時間×2回・2クラス)を設計し実施した。(2)事前テスト、事後テストを行った。また、(3)事後テスト終了後、保護者へのアンケートを実施し、家庭内での普段のコミュニケーションのタイプ等を聞いた。
 アンケートによって児童のタイプを(1)個人要因として、保護者に聞いた家庭でのタイプをa.「アグレッシブ」、b.「アサーティブ」、c.「ディフェンシブンシブ」、d.「その他」(未記入及び複数回答)に分け、検討した。また、コミュニケーションの頻度が違うかと考え(2)家族数要因としてA.一緒に住んでいる家族員数、B.きょうだいの数による影響を検討した。  本報告では、家庭内でのタイプによって事前における自尊感情(家族)の値が違うのか(家庭内でのタイプが「アサーティブ」な児童は、自尊感情(家族)が高いのか)、2回の授業で授業目的を理解(事前―事後の変化量で測定)し、「アサーティブ」な態度が育まれた児童は、自尊感情(家族)も高くなるのか、測定を行った。
【結果】
(1)家庭内での態度が「アサーティブ」な児童は、「アグレッシブ」な児童に比べ、自尊感情(家族)が有意に高い傾向が見られた(p<0.10)。(2)ロールプレイングの授業は、「アグレッシブ」な児童と、「アサーティブ」な児童に特に効果的であった(p<.001)。(3)家庭で「アグレッシブ」な児童は、授業によって自尊感情(家族)も有意に高くなった(p<.01)。(4)授業目的の理解の変化量と自尊感情(家族)には、正の相関関係があった(Pearsonの相関係数.269*:5%で有意)。(5)家族員数、きょうだい数による影響はなかった。
【考察】
(1)4つのタイプ別の授業目的の理解の変化をみると、いくつかのタイプで事前と事後において有意に理解が深まっていることから、「家庭生活を大切にする心情」を家庭生活におけるコミュニケーションの改善としてとらえると、ロールプレイングを用いた授業は効果があったということができる。なかでも、(2)事前において最も値の低かった「アグレッシブ」な児童において、その変化量が大きく、保護者からみて攻撃的な児童には最も良い影響が見られた。(3)もともと「アサーティブ」であった児童においても有意な差ではないがプラスの変化があり、自分の態度を相対化して納得する上で重要な機会であったと推測される。(4)「ディフェンシブ」な児童は変化量が少なかったが、元々他者からの攻撃を受けやすい傾向のある児童をどのようにしてアサーティブにしていくのか、今後検討をする必要がある。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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