抄録
【目的】
家庭科では、日常生活を中心とした人間の生活を学習対象とし、生活の現状や将来の生活を考えて家庭生活の中から適切な学習課題をみつけ、解決し、日常の生活で実践する力をつけていくことが重要である。この実践力を高めるためには、まず、家族の一員として自分にできることは自分でやろうとする態度や自分の成長を自覚し周りの人に感謝する気持ちを育てることが必要である。心を育てることが家族への思いを深め、家族の一員として、生活をよりよくしようとする実践的な態度を育てることにつながると考える。しかし、身近な生活や家族は、小学生にとってあたりまえのことであって、生活の何を見つめてよいかわからず、生活の何をよりよくしていけばよいかとらえるのが難しい。
そこで、本研究では、小学校家庭科の新学習指導要領「A家庭生活と家族」の内容をとりあげ、授業実践を通して日常生活を可視化してとらえさせ、確かな実践力をはぐくむ授業を開発することを目的とする。
【方法】
授業実践は、横浜国立大学附属小学校第5学年1組~3組 男女120名を対象として、本研究者の本庄が平成22年1月に、4時間で行った。題材は、「家族の仕事と自分の役割を見直そう」である。日常生活を可視化するために、事前調査で「家族からはじまるイメージマップ」を、家庭での課題で「家族への1日密着取材」の様子を、授業で、「家庭の仕事表」「メッセージポスター」を作成させ、自分の生活を見つめ直す手立てとした。また、授業による子どもたちの変化を客観的にとらえるため、実践段階を考え、授業前と授業後の家族や家庭の仕事に対する意識を分析した。
【結果および考察】
(1) 家族からはじまるイメージマップ
「『家族』と聞くと、何を思い浮かべますか。」と問い、子どもたちの家族へのイメージを可視化し、実態把握を行ったところ、身近である家族についてじっくり考えたり、生活に疑問をもったりすることが少ない実態が明らかになった。
(2) 家族への1日密着取材
冬休みを利用し、最も家庭の仕事をしている家族に1日密着して、その行動と密着して感じたことを書かせる課題に取り組むことにより、児童らは自分の家庭生活を見直し再確認していた。
(3) 家庭の仕事表の作成
付箋を利用し、家庭の仕事を衣・食・住・家族に関する仕事にまとめ、今の自分にできること・6年生の自分・中学生の自分・大人の自分と付箋を動かしながら家庭の様子を可視化した。この活動は、児童が現在の自分を自覚するうえで有効であった。
(4) メッセージポスターの作成
家庭実践を友達と紹介しあうために、メッセージポスターを作成した。家庭からのメッセージ・これからの自分へのメッセージも書き入れて発表することにより、友達と自分との違いや共通点を見出せた。
【まとめ】
授業前は、家族に頼まれて「お手伝い」をしていた子どもたちの80%以上が、授業後は家族のことを考え、自分ができることを継続していこうとする意欲をもった。この意欲の高まりが、確かな実践力をはぐくむ原動力になると考える。また、日常生活を可視化することによって、実生活の課題を発見しやすくし、問題解決的な学習を充実させることができた。今後は、学校の実態に合わせた家庭との連携や、家族への思いを高める学習の具体的な年間計画への位置づけが重要となる。