抄録
<目的>持続可能な社会の構築が叫ばれ、学校教育の中に環境教育の視点が導入されてからすでに20年が経過した。この間、「総合的な学習の時間」が設置され、環境学習を実践するケースが増えていったが、今回の新学習指導要領では「総合的な学習の時間」は縮減されることとなった。一方、持続可能な社会づくりを支える、環境に配慮した消費者を育成することへの期待感は大きく、これまで以上に教科横断的な視点から環境教育を進める必要があると同時に、地域活動と連携して推進することがますます重要になってくると考えられる。本研究では、公民館活動の一環として、小学生と保護者を対象に行われた「草木染め体験プログラム」を通し、染色教材を用いた環境教育の可能性を探ることを目的とする。
<方法>公民館活動の特徴は、地域の子どもや大人を中心に大学生がサポーターとして加わるプログラムを展開できることにある。また、子どもたちは、学校では同じクラス・同年齢集団で学習することが一般的であるが、公民館では異年齢集団で遊び学べることが特徴である。本研究では、水戸市・五軒町公民館が小学生やその保護者を対象として毎週土曜日に行っている「五軒みんなのサタデー」活動の協力を得て、午前中2時間の枠内で実施できる「草木染め体験プログラム」の有効性を検証した。【体験プログラム】2010年1月に実施、小学生16名(1年生7名、2年生3名、4年生1名)、保護者3名、および大学生7名がサポーターとして参加した。染色材料として、梅(枝)、栗(イガ)を用意し、木綿布を染色した。梅は水戸市偕楽園で剪定された枝を使い、栗は水戸市に隣接する笠間市の農家から提供を受けた。染色時には、石を布でくるむ、輪ゴムや洗濯ばさみを使って絞り染めをするなど、模様を作りだす作業も取り入れた。【評価】プログラム終了後、小学生を対象として、植物を使った遊び経験の有無・色や模様・実習内容に対する感想、を中心に意識調査を行った。また、大学生サポーターを対象に、授業内容(子どもたちの興味をひくことができたか・安全性への配慮・楽しめる内容だったか・五感を使った内容だったか・小学校の授業で実践可能か)に対する意識調査を行った。
<結果>子どもたちは染色作業を進める中で、栗のイガを煮出す時には「山の匂いがする」、梅の枝を折る際には「中はピンク色だね、ピンク色に染まりそう」などと反応し、染液の色の変化にも強い関心を示したことから、予想以上に子どもたちは匂いや色の変化に敏感であり、注意深く観察している様子が窺えた。子どもたちへの意識調査の結果では、植物で遊んだ経験があるのは9名であり、ほとんどが「また草木染めをしたい」と回答していた。これに対して、植物で遊んだ経験がない子どもたちの半数が「したくない」と回答しており、その理由として「匂いで気持ちが悪くなった」ことを挙げていた。子どもたちが興味を示した「色」については、3割が「自分がイメージした色と違った」ことを挙げており、「もっと濃い色に染まることを期待」していたようである。大学生サポーターによる評価では、「草木染めに子どもたちが強い関心を示し、異学年交流が活発に行われ楽しむことができた」、「五感を活用できた」など、いずれも高い評価を得た。その一方、安全面では、火傷の危険性や換気・室温調節への配慮が十分ではなかったことが指摘された。また、授業化する場合の課題として、作業内容をどの学年のレベルに合わせるのか、また、安全面を確保するには複数のサポーターが必要、という点であった。さらに、環境教育の視点からは、その地域に根づいている植物を用い、五感を活用した環境学習教材として有効だと評価できる一方、染色に使用する植物を子どもたちと一緒に探す時間を設け、この植物が生息する地域自然環境の特性に気づかせる内容を加味する必要性が指摘された。