日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: A5-4
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口頭発表
被服製作に関する帰国生の知識と技能の実態
*山崎 真澄池崎 喜美惠
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抄録
目的
帰国生らに家庭科の指導をした経験から、帰国生の中には今までに一度も被服分野を学んだことがなく、初めて被服製作をするという生徒もいることがわかった。その理由として、帰国生の様々な海外生活経験や通学校の違いなどによって、家庭科の学習環境が違っているからであると思われる。彼らが高等学校時に帰国した場合、ボタン付けなどの基礎縫いもできずに、成人を迎えることとなるであろう。
また、成人した帰国生から家庭科教育の実施についてインタビューしたところ、調理に関しては習い事で少しでも補うことができるが、被服に関しては身につけることが難しいと言っていた。
このような帰国生の現状や家庭科に対する要望を踏まえて、本研究では、帰国生がどの程度、被服製作に関する用語の認知度や理解度があるかを調査した。さらに、なみ縫いと半返し縫い、玉結び、玉どめの技能の習得状況を調査した。そして、帰国生の被服製作における教育の一助となることを目的として本研究を行った。
方法
調査時期:2010年2月
調査対象:東京都内帰国高校生
現地校やインターナショナルスクールに通っていた生徒に関しては、被服製作を経験していることは少なかった。しかし、日本人学校に通っていた生徒は授業の中で被服製作を行っていた。小学校を日本で過ごしてから海外に渡航する生徒もいるため、家庭科の学習経験に大きな差がみられた。
調査項目:質問紙調査、実技調査
・用具、布、縫製方法に関する知識、理解
・知識の入手方法
・衣生活に関する家庭での実践状況
・海外生活について(通学校、滞在国、滞在年数等)
・なみ縫い、半返し縫い(玉結び、玉どめを含む)を各5分間で実施
結果及び考察
1.用具に関して「まち針」「縫い針」などの製作用語の認知度は高かったが、「へら」や「リッパー」「ルレット」など普段の実習であまり使われていない用具に関しては認知度が低かった。
2.「なみ縫い」「ミシン縫い」の縫製方法に関しての認知度は高かったが、「半返し縫い」「本返し縫い」に関して「知らない」と回答した生徒が多くみられた。
3.布の「縫いしろ」は半数程度の生徒が「知っている」と回答したが、「バイアス」や「みみ」などの用語を「知っている」生徒は少なかった。
4.用具についての用語を何から学んだかについては、「親などの家族」が一番多く、続いて「教員」であった。縫製方法に関しての用語は「教員」という回答が一番多く、続いて「親などの家族」という結果であった。
  5.用具に関する用語については認知度と理解度が一致していた。しかし、縫製方法に関する用語については、認知度と理解度が一致していなかった。また、布に関しては、認知度も理解度も低い傾向がみられた。
6.通学校別に用具、布、縫製方法について比較したところ、日本人学校に通っていた生徒のほうが、認知度が高いことが明らかとなった。このことは、日本人学校に通っていた生徒は家庭科の学習で被服製作など様々な経験をしてきたことが、用語についての認知度に結果として現れたと考えられる。
7.実技調査に関しては、ビデオ録画から縫う状況を見た結果、自己流の縫い方をしており、正しい縫い方をしている生徒は少なく裁縫に慣れていないといえる。
今後の課題
帰国生のみの知識及び技能について調査したが、今後は一般生との比較をしつつ、被服製作の知識や技能を生活に活かすことができるように、授業計画を考案していきたいと考えている。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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