日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: B1-1
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口頭発表
栄養の認識を深める学習の工夫 
「おいしさ」を中心におき、他教科と関連させて
*佐藤 雅子石井 克枝
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抄録
【目的】
 栄養学習は食教育の中でも重要な位置を占めているが,十分な理解が得られていない。小学校の献立作成では,栄養バランスはとれているものの様式や味にこだわらない献立なども見られる。また,脂肪分や糖分の過剰摂取はよくないと知りつつ,日常生活に生かせない児童も多い。そこで家庭科と他教科の学習を関連づけることで,栄養の認識を深めさせる学習を構築する。本研究では特に第6学年理科との関連を図り,五大栄養素の学習を小学校家庭科の最後に位置づけることで,栄養の概念を認識しやすくなると考える。
【方法】
 千葉県公立小学校6年生の児童32名を対象に,2009年4月から11月にかけて,他教科と関連させた家庭科の授業を実施した。内訳は,理科「植物の成長」「人の体のつくりと働き」と家庭科「楽しい食事をくふうしよう」11時間である。事前と事後で「1.『栄養』『栄養素』に関する意識調査」「2.献立構成の要素」について質問紙にて調査し,それらを分析の資料とした。
【結果】
1.理科と関連させた栄養学習
 6学年2学期の理科学習「水溶液の性質」で扱った内容を次単元「人の体のつくりと働き」につなげ,消化と関連させた。またこの単元では呼吸や食べ物の消化・吸収を扱う。呼吸の学習では鉄の存在に気付かせ,鉄を摂取する必要性を理解させた。そしてこの仕組みを家庭科学習「食べ物の体内での働き」と関連させた学習を構築した。また,1学期の理科学習「植物の養分」と家庭科学習を関連づけ,人の成長に必要な炭水化物が植物によって生成されていることと人がこれらを摂取していることを認識させた。これらの学習を関連づけることにより,児童は食べ物が体内で消化・吸収されたあと,その働きにより3つに分けられること,それに五大栄養素が関係していることを学んでいった。この学習は栄養素と食品の体内での働きを関連づけるのに有効であった。
2.家庭科の学習を保健の内容に発展させる
 保健学習では生活習慣病についての学習において「塩分,脂肪分,糖分の過剰摂取による害」などを扱う。この学習を家庭科における栄養学習の後に位置づけ,過剰摂取による害のみでなく,本来の栄養の意味と栄養素の役割を再認識させた。児童は部分的な知識でしか捉えていなかった栄養について,より広い視野で考えることができ,自分の食生活を振り返るのに有効であったといえる。
3.「おいしさ」を中心においた学習の展開
 五感を使って味わうことを2年間の家庭科学習全般に位置づけた。「おいしさ」をテクスチャーや嗅覚などでも感じられることを実感していった児童は,献立学習においても栄養バランスのみでなく,様式や色など種々の要素を意識的に取り入れた献立を作成した。そして食の学習のまとめの段階で栄養を考える意味を知らせ,五大栄養素の学習を行いながら,食を総合的に見る視点をもたせた。栄養学習を6学年2学期に時期に位置づけることは,栄養の認識を深めるのに有効であるとともに,中学校家庭分野の内容ともつなげることができ,効果的であるといえる。
4.まとめ
 他教科と関連させることにより,消化・吸収という現象と食品に含まれる成分を理解し,それらが「自分が食べる」という行為と結びついた。また,栄養素が体内に入り,それぞれの働きに応じて食品が群分けされていることにも気付き,栄養素と食品,体内での働きの関連が図れたと考える。さらに,家庭科の学習を保健学習につなげたことで,摂取する量にも着目し,中学校の学習内容への関心をもたせることにも有効であった。栄養学習を小学校第6学年の2学期に位置づけることは,実感を伴った栄養学習とするのに有効であることが示唆された。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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