日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: B1-4
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口頭発表
食育実践事例の特徴
文部科学省委託事業の実践事例の分析から
*河村 美穂
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キーワード: 食育実践, 学級活動, 家庭科
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抄録
研究目的
近年の食の問題状況の解決に向けて食育への期待が高まっている。とくに2005年に栄養教諭制度が施行され、食育基本法が制定されてからは、学校教育における食育の実践が以前にもまして盛んに行われるようになった。
戦後の家庭科教育においては一貫して食教育を実践してきているが、これらの実践と現在の食育実践の相違はなんであろうか。本研究は、最終的には家庭科教育における食教育の特徴を明らかにすることを目指し、まず、現在の学校教育における食育実践の特徴を明かにすることを目的とする。
本研究では、食育の典型的な実践として、文部科学省が全国の都道府県に委託し実施されてきた「食育推進事業」における実践事例を対象として検討することとした。

研究方法
 全国47都道府県の教育委員会に、郵送により依頼し(2009年11月)、24の都道府県の文部科学省委託食育推進事業に関する89資料(2006~2008年度分)を収集した。
 資料は、事業報告書、食育指導資料、啓発用のパンフレット等多岐にわたったため、このうち、事業報告書、指導資料等に掲載されている実践事例を抽出し、学習内容、対象学年、指導形態、実践されている教科などについて分析した。

結果と考察
収集資料のうち、食育実践事例が掲載されていたのは53資料であり、さらにそのうちの40資料が指導案を掲載して指導内容を詳細に示していた。
学習内容が詳細に示された実践事例は316事例であり、実践報告、および実践をした上での実践の提案として示されていた。これらは学校段階別にみると、小学校215事例、中学校64事例、高等学校8事例、特別支援学校28事例(不明1事例)であった。
教科・活動別にみると、小・中学校の場合、学級活動における食育実践が全体の4割以上を占めていた。家庭科は小学校高学年で3割、中学校で1割であった。抽出した食育実践事例はその他の教科(社会科、生活科、理科、保健体育)や総合的な学習の時間においても実施、提案されていたが、その割合はいずれも1割前後であった。
これらの実践事例には次のような特徴が見られた。
  (1) 学級活動における食育実践は、1時間単位で行われるものが多い。
(2) 社会科、理科で実践されているものは、本来の単元のテーマの中にトピックスとして食育を位置づけるものが多い。そのため、食育実践としての目的は明確になりにくい傾向がある。
(3) 総合的な学習の時間における食実践事例は、年間指導計画の中で各教科と連携を図るものが多い。
(4) 食育実践事例の学習内容は、朝ごはんの重要性、栄養のバランス、生活リズムの確立、学校給食と関連させたものが多い。
(5) 学級活動としての食育実践事例が多いことからも、栄養教諭とともに、担任の役割が大きい。
(6) アンケートの調査結果、検診結果などを用いて実態からはじめる授業が多く見られた。
 食育実践事例は、児童生徒の実態から必要に迫られて構成されることが多い。その結果として朝ごはんの欠食を防ぐような授業が多く実施されているのではないかと考えられる。ただし、実態と理想的な食生活の乖離を解消するような実践を工夫することが課題である。
とくに「朝食のよさ」「バランスよく食べることのよさ」といった、あるべき姿を設定して啓発するような実践は、「早寝早起き朝ごはん」といったスローガンの多用とともに、精神主義的な食育への傾斜として懸念される。
実践事例校においては家庭との連携も工夫されているが、日々の授業の中で行われる食育と家庭生活における問題状況との関連をはかる工夫もより必要とされていると考えられる。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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