日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: B1-6
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口頭発表
家庭科教育における言語活動の追究
*齋藤 和可子
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キーワード: 家庭科教育, 言語活動, 食事
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抄録
【研究目的】 学習指導要領改訂に伴い、各教科においての言語活動が重視されることになった。言語力は、思考力・判断力・表現力等の問題解決学習のためだけでなく、生きるために必要な基礎的かつ重要な能力である。 本研究では、言語力の大切さを認識した上で、家庭科教育における言語活動の適切なあり方について追究する。言語活動は、生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技術の習得を通して生活を工夫し創造する能力、実践的な態度を育てることを目標にしている家庭科と密接に関わっていると考えられる。  そこで本研究の目的は、家庭科の独自性をふまえた言語活動のあり方を検討し、実践可能な指導法を追究することである。 【研究方法】 アンケート調査は、質問紙留置法で、尺度評価と自由記述で実施した。調査対象は、関東の公立中学校1~3年生408名、公立高等学校2~3年生188名、合計596名、調査期間は、2009年10月~12月であった。また、文献調査においては、平成20年度改訂小・中学校学習指導要領、小・中学校学習指導要領解説、中央教育審議会言語力育成協力者会議報告書等を参考に言語活動の意義や内容について分析・検討した。 これらをふまえて、家庭科の独自性に留意して「食」における言語活動に限定して調査研究を行った。 【結果】 『食物・調理過程への興味』の結果においては、食事時、実際に食べているものと直接結びつく内容は話題にのぼりやすいことが明らかとなった。このことから、食事に対する考え方や価値観を共有しやすいと考えることが出来る。 『食事時の会話の役割』においては、食事時に話す内容、食事時に立てる音に対して敏感であることが明らかとなった。食事場面では、食事に適した話題を取捨選択しているため、場面に合った話題を選択する力がつくと考えられる。また、食事場面において、食べたときに感じた味覚・嗅覚・視覚は、表現しやすいということが明らかとなった。自由記述調査での「食事のときは、なぜか自分の思っていることが率直に話せる」等の記述により、五感だけではなく自身の心理的内面をも表現しやすくしていると考えることができる。以上の結果から、食事時の会話による言語活動は、自己表現に必要なスキルを身につけることが出来ることが認められた。 『食事の満足度と会話』においては、食事の満足度が高いことと、食事時の会話が弾むことには関連があり、食事の満足度を構成する1つの要因として会話が存在することが明らかとなった。 また、『会話の場としての食事』の結果から、食事時の会話に対して肯定的な考え方をもっていることが明らかとなった。家族や親しい人との会話は、食事の場の雰囲気がリラックスできるものであり、その環境要因がおいしさにつながると考えられる。食事のおいしさは、味や匂い、外観、色、音だけでなく、体調や経験のように生理的・心理的要因、食事の雰囲気などの環境要因に起因する。おいしさが喜びとなり、副交感神経の活動が高まることでリラックスした心理状態となり、会話が弾むと考えることができる。また、このことは自由記述結果の「食事のときに会話をしたら体にいい」のように、会話が食事をおいしくし、免疫機能を高めることが実感を伴って現れているといえる。以上の結果から、食事時の会話は健康で豊かな食生活を創ることが明らかとなった。 また、全体を通して、約半分の項目で男女間に有意差が認められた。これは、男女の発達段階や価値意識の違いが原因であると考えられる。言語活動を導入した実践授業の結果から、食事場面だけでなく調理場面からの活動を取り入れることで、男女間の有意差を改善できた。 今後も時代の変化に対応した食事時の会話や教育的意義、よりよい言語活動のあり方を追究していきたい。
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© 2010 日本家庭科教育学会
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