日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: A1-4
会議情報

口頭発表
英国におけるクッキングバスを活用した食育の推進
*鈴木 洋子
著者情報
キーワード: 食育, クッキングバス, 英国
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
<目 的>
 子どもの生活自立力を高めるには、自発的な体験活動の蓄積が肝要であり、食生活改善の打開策は体験的要素に富む調理にあると考えている。しかし、家庭科における調理実習の時間は減少し、食品の調理性を理解させることはもとより、調理に必要な技能技術を習得させることさえ難しくなっている。さらに、家庭での家事参加への低減も、調理技能技術の低下に拍車をかけている。
 英国における国策としての食育は、1998年に保健省と教育省(後に教育・職業技能省に改名)が共同で児童生徒の食生活改善に対する施策として National Healthy Schools Programmeを発表したことに始まり、2001年に発表されたFood in Schools Programmeを中心に実施されてきた。Food in Schools Programmeは、8つの領域から構成されており、その中の「料理クラブ」では、特に楽しみながら学ぶことに重点を置き、調理を促進してきた。
 今回報告するクッキングバスは、1998年にチャリティーにより組織された団体Focus on Food Campaignにより運営されている。運動の核に、調理が食育の中心であることを掲げ、そのための学校における調理設備の改善や教師の指導力の向上はじめ、食育を小・中・高等学校の必修科目にすることを目的としている。
 そこで、食育を調理中心に推進する際の示唆を得ることを目的に、クッキングバスにおける実践を視察し、運営方法などの具体的な方法を調査するとともに、教科科目デザイン&テクノロジー中のフードテクノロジーの調理室における学習との違いについて調べた。
<方 法>
 Focus on Food Campaignの創設者で現在ディレクターのAnita Cormac 氏へのインタビューと、クッキングバスの調理指導の視察並びに実施者Sarah Helliwell氏へのインタビューを行った。
 クッキングバスによる実践はヨークシャー州のSt Aidan’s C of E High Schoolにおいて、2010年3月16日に行われた。10学年対象の実習と、同校に勤務する教師を対象にした実習の2件を視察した。クッキングバスにおける実習と学校内の調理実習室における実習を比較するために、同校におけるフードデザインの9学年の授業を視察した。インタビュー及び視察の補足として、現地で収集した資料等を参考にした。
<結 果>
・Focus on Food Campaignは、Food Standards Agency(食品企画庁)や、 BBC放送、デザイン&テクノロジー協会、ピザエクスプレスなどの官民にわたる多くのパートナーとスポンサーにより支えられている。
・クッキングバスはスコットランド、ウエールズ、ヨークシャーの各1台と、インドランド2台の合計5台が稼働している。
・クッキングバスでは、フードテクノロジーの教員免許保持者2名が指導にあたる。ドライバーは、バスに宿泊している。
・クッキングバスの経費の一部は、調理用具の販売や同組織が運営する料理学校の収入により賄われている。
・フードテクノロジーの学習が座学中心であるのに対し、クッキングバスの学習は実習に重点をおいている。
・クッキングバスの調理実習では、児童生徒が調理に集中できるように、洗い物等の作業をボランティアの保護者に委ねている。
・クッキングバスには、教師や地域住民に、調理を中心に食育を推進する必要性をアピールする目的がある。
付記:本研究は平成21年度科学研究費補助金(21530932)の交付を受けて行った。
著者関連情報
© 2010 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top