抄録
目的
国民生活センターの報告によると、消費者トラブル相談件数のうち未成年者が契約者であるケースが増えている。そのうちの中学生の割合は1995年に6.5%であったのに対し、2004年には11.2%と増加しており、被害者が低年齢化する傾向にある。1980年代から、音楽、漫画、アニメ、ゲーム等がマーケティングの対象となり、そうした消費文化との関わりが、中学生の消費生活にも影響を与えているのではないだろうか。また、パソコン・携帯電話・家庭用ゲーム機等によりインターネットを通して消費文化へのアクセスが容易になったことが、有害情報やネット依存症等の問題の発生に結びついていると考えられる。
そこで本研究は、消費者被害が増加しつつある中学生の消費文化との関わり方やその背景で生じているトラブルなどの実態を把握し、義務教育における家庭科に求められる課題を明らかにすることを目的とする。
方法
中学2年生(N=345,回収率86.3%)を対象に、トレーディングカードゲーム(TCG)、テレビゲーム、オンラインゲームといったゲームに焦点を当て、関わり方等についての調査を実施した。高校2年生(N=168,回収率97.7%)、大学生(N=189,回収率75.6%)にも同様の調査を行い、比較対照することとした(調査期間2009年06月~11月)。
調査紙は、以下の項目を用意した。
(1)ゲームと関連のある携帯電話及びパソコンの利用状況
(2)TCG、テレビゲーム、オンラインゲームの経験の有無や遊び始めた年齢、関連する消費者トラブルの被害の有無等
(3)金銭に対する価値観に関する16項目
「全くそう思う」(1点)~「全くそう思わない」(4点)の4件法で回答を求め、それぞれ配点した。
(4)倫理観に関する9項目
「よくあてはまる」(1点)~「全くあてはまらない」(5点)の5件法で尋ね、それぞれ配点した。
(3)、(4)に関しては調査対象者に合わせて文章表記を調整し、逆転項目は配点を逆転させた。項目別平均点及び項目全体の合計点数を算出し、3種類のゲームについて、全て「経験あり」のグループと全て「経験なし」のグループに分けて比較した。
結果
(1)中学生の約6割が毎日携帯電話に触れていた。高校生、大学生になるとその割合は約9割と急増していた。パソコンについては頻度の割合にばらつきがあるものの、半数の生徒が「週1、2回くらい」パソコンに触れると回答していた。こうしたインターネットアクセスするツールが身近になる実態を踏まえ、危機管理に関する授業提案、教材開発が急務であるといえよう。
(2)各ゲームの経験率は、TCG56.9%(N=346)、テレビゲーム73.1%(N=342)、オンラインゲーム29.2%(N=322)であった。TCGやオンラインゲームは、高校生、大学生と比較して経験率が高かった。また、遊び始めた年齢も相対的に低い傾向にあり、ゲームに触れる年齢が徐々に低年齢化してきていることが示唆された。また、TCG経験者の18.2%(N=197)、オンラインゲーム経験者の16.0%(N=94)が、関連して生じるトラブルに直面していたが、相談や被害報告等の対応をしているケースは確認できなかった。
(3)(4) 金銭に対する価値観や、倫理観の尺度項目の得点は、「ゲーム経験あり」の生徒の方がどちらも有意に低かった(p<0.05)。項目別にみると、金銭主義的な側面や自己欲求のコントロール等に影響がみられた。
以上の結果から、以下の点を取り入れた教材、授業案の開発が喫緊の課題と考えられる。
○ 幼い頃から触れる消費文化が自分たちの生活に与える影響と問題点についてクリティカルに考え、子ども自身が主体的に改善策を提案できるシティズンシップを身につける。
○ 身近な消費文化で生じているトラブルの実態を知るとともに、トラブルが生じる背景について理解し、自ら解決策を考え、対応できる能力を身につける。
○ 情報を精査し、選別するメディアリテラシーおよび、多角的な視点から論理的に考えるクリティカルリテラシーを身につける。