日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第53回大会・2010例会
セッションID: 2-3
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口頭発表
TEACCHプログラムによる発達障害のある児童の家庭科における教材開発ーデコレーションによる作品製作を通して
*早川 礎子
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抄録
1.背景・目的・方法
発達障害児は不器用さを特徴とするが、造形が好きという事例が数多くある(角南・佐藤、2008・常田、2008)。そのため、「技法の優劣のない情報発信の楽しみ」(小串里子、2000)が求められる。また、造形活動の教育的意義もある(栗田、2009)。児童は、視覚的なイメージに変換し、理解する作業を得意とし、また、手芸という造形活動は、個別であり、コミュニケ-ションを苦手とする気質を回避しての学習が可能である。支援の教材開発は、近年、重要課題だ、家庭科教育の具体的な支援プログラム研究の数は少ない(安田・岡田・山田、2009)。児童が、不器用さを回避し、表現と共同作業を学習課題として含み、家庭科を学べないか。本稿は、家庭科教材を提案し、表現実践の方法について検討する。研究方法は文献研究・授業実践に拠る。
2.実践例 デコレーションによるフェルト作品の製作
 TEACCHプログラムは、構造化という自閉症児が理解しやすい環境を提供する教育プログラムである。これに対応させ、本稿では、デコレーションアートを題材とした教材開発を提案する。最初に、完成例を視覚的構造化する。次に、デザインをもとに議論し、感想を述べる。再度、考案し、見通しをもった製作を行う。パターンの質問をする。色相カテゴリ-への気づきを誘導する。赤、青のグループと言葉をかける。ピンク・青の色相のポケットテッシュケースカバーに赤・青系のフェルトを貼り付ける。色相分類し、混乱を回避する。作品について意見交換し対人的コミュニケーションを行う。
3.結果
(1)接着剤を用い、短時間で作業を製作できる。不器用さを回避でき、完成品を作ることによって、達成感を育てることができる。
(2)初めに完成作品を提示することにより、全体の見通しがもてる。
(3)他の児童の作品の比較により、コミュニケーションが可能となる。
4.考察
 発達障害のある児童は、社会性・コミュニケーション・こだわりで定義され、気質支援をする教材プログラムが必要であると考えられる。社会性は、意欲が異なる、共同注視が困難から、視覚的構造化し、理解させる必要があり、コミュニケーションは、視覚的構造化した場面を作り、パタ-ンを作り学習することが大切であると考えられる。こだわりは、見通しを持たせることが有効とされると考えられる。
 以上を取り入れた教材開発により、情動安定化に、手順化し、視覚的に示し、ゴールを明示したりすること、また、共同作業においては、対人コミュニケーション、交流型支援を行うことが可能と考えられる。行う支援は次の通りである。
1.社会化...作業手順の図示 2.コミュニケーション...授業の初期の作品アイディアについての議論 3.こだわり...赤・青のグループのカテゴリーを理解するために行う。
 同一性保持、こだわり、周囲とのコミュニケーションの遅れからのグループ学習の困難、不器用さを回避し、学習することができると考えられる。
参考文献
1)梅永雄二編著(2010):TEACCHプログラムに学ぶ自閉症の人の社会参加、学研教育出版
2)角南真弓・佐藤史子(2008):広汎性発達障害児のための造形プログラムと支援、愛媛大学教育実践総合センター紀要、p55、常田真由美(2008):障害児教育実践 長野県上伊那支部協同レポート 発達障害を持つ生徒の造形ワークショップに実態と対応―実習におけるおける問題点共同的学び、家庭科教育研究者連盟、p21~23
3)小串里子(2000):ワクのない表現教室、フィルムアート社、2000、p70
4)栗田良之助(2009):特別支援に役立つハンドブックvol.12絵画・造形、いかだ社、p99
5)安田悟・岡田智・山田薫(2009):広汎性発達障害の児童への造形活動の実践―表現と共同作業を促す図画工作活動、共立女子大学家政学部紀要55、p121
6)山崎晃資(2009):発達障害と子どもたち アスペルガー症候群、自閉症、そしてボーダーラインチャイルド、講談社、p210
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© 2010 日本家庭科教育学会
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