日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: B3-5
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第55回大会:口頭発表
家庭科教師の自発的研修組織におけるニーズと効果
-学び合いを支援する場作りの試み-
*葛川 幸恵堀内 かおる
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抄録
目的:中学校では、今年度から、新学習指導要領が完全実施となる。グローバル化や少子高齢社会の中で、これからの時代を生き抜く力をどう育成するかが問われている。
今回の中学校学習指導要領では、選択教科の取扱いは、学校教育法施行規則第73条で規定する標準時間数の枠外で開設し得るとなったことから、学校現場では、標準時間の枠外を使ってまでも履修することはなくなり、家庭科の持ち時間数が減り、中学校のなかには、家庭科教師が授業時数の関係で配置されない所もある。このような状況の中で家庭科教師たちは悩みながらも、よりよい授業を作る努力をしてきた。横浜市は全国の中でも家庭科の教員免許状を持った家庭科の教師が多く配置されている。横浜市では、市の研究会はあるものの多忙さの中で参加できなかったり、新しい情報を入手できなかったりという声も聞かれている。
 家庭科は、時代の変化に最も影響を受ける教科である。現場だけでは、最新の情報や研究成果を把握しづらい。そこで、時代の変化に対応したカリキュラム構想や授業実践には、大学と連携が有効で時代のニーズにあった授業方法や題材作りをすることも可能となるのではないかと考える。授業改善の手だてを教師同士で共に考え大学教員との協働による自己研鑽の場作りが必要である。家庭科教師が、授業力を向上するためには何が必要か、家庭科の授業が充実するためには教師がどのようなことをすればよいか、教育現場の教師たちの生の声を聞くことを通して、教師たちが捉えている教科の課題と力量向上のための手がかりを明らかにしたい。
方法:平成24年1月から横浜市立中学校家庭科担当教師の有志8名で自発的な研修組織としての研究会を立ち上げた。この研究会は月1回の開催で、大学教師1名も参加して年間の活動計画を立て議論を重ねている。本研究では、この研究会(第1回~第3回)の議論を録音後文字化した記録をもとに、家庭科教師がとらえている課題や、家庭科授業を展開する上で大切にしていること、家庭科を通してどのような力を育成しようとしているかを明らかにする。
結果と考察:第1回研究会の話し合いの中で、①家庭科で何を教えたらよいか、男女共修で物づくりの時間数が減り習得できず、本当に必要なことなのかという疑問もある。②かつては研修の場でベテランの教師が指導助言をしてくれたが、一人体制になり若い教師が自分から進んで研修を行う機会がない。③授業力を向上する研修組織が必要で、特別な授業でなく、普段の授業をもっと観て勉強したいと考えている。④雇用形態も、臨任や非常勤が増え研修する場が少なく、誰でも教えられると思われているのではないか。⑤家庭科教育が学校経営の中に生かされていない。少ない時数なので家庭科教師を置かない管理職もいる。⑥他教科との連携や、家庭科の存在意義を示す必要がある、といった現状の課題が浮かび上がった。次は若手の具体的に「住居」が教えづらいという悩みに対して、カリキュラム作りや学習題材を考えてみることにした。
 2回目の研修会では、5名の教師がそれぞれが持ち寄ってきた資料で授業の可能性について、発表しディスカッションした。授業デザインすることが、生徒がこれからの生活を創る力につながるし、問題解決などの学習を通して、どうしたらよいかを学びながら、これからの自分がどう生きるかを模索できるという仮説が提起された。
 3回目の研修会では、6名の教師が参加し2回目の授業をさらに工夫改善した学習について報告をした。学校の中で家庭科がアピールできる学習はないかが話題となった。地域と学校をつなぐような学習内容になれば、誰もが一目を置くのではないかと考えられ、互いの実践の内容を聞くだけでも、他の教師も自分がやってみようと言う気持ちになれることが指摘された。また、完成度の高いものでなくてよいので、研修を通して教師同士が一緒に学び合いながら自分の学校で何ができるかを考え、教師の創造力を働かすことにこそ、授業づくりを楽しみ、意欲がわき、授業力向上につながるということに気づいた。
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© 2012 日本家庭科教育学会
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