日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: P14
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第55回大会:ポスター発表
教員養成課程における金融教育実践者育成のための授業検討
―北海道教育大学講義「金融教育」の場合―
*鎌田  浩子 川邊 淳子
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抄録
【研究の背景および目的】北海道教育大学は,5キャンパスからなる大学である。このうち札幌・旭川・釧路校が,北海道全域の教育現場に密着した「教員養成」を行っている。一方北洋銀行は,資金量・預金量は道内銀行で最大かつ第二地方銀行で最大の資金量であり,北海道民にとって最も身近な銀行である。北海道教育大学と北洋銀行は,平成16(2004)年11月に「教育に関する覚書」を締結し,協力体制を作った。さらに,平成19(2007)年9月に金融教育の「共同研究契約書」を締結した。平成22(2010)年度から上記の3キャンパスにおいて,「金融教育」という講義を集中講義として新設し実施した。授業の位置づけとしては,教養科目の「現代を読み解く科目群」の一つであり,各教科などの教員免許取得のための専門科目ではない。しかし,学生の大半は,大学卒業後,実際に道内の諸学校の教壇に立つ。このため,これらの学生が金融教育の授業を受講することは,そのまま北海道の学校教育における,金融教育の普及につながると考えられる。そこで本研究では,北海道教育大学の講義「金融教育」の場合を取り上げ,教員養成課程における金融教育実践者育成のための授業の有効性について検討することを目的とした。【方法】講義は,平成23(2011)年8月9~12日の4日間,集中講義として実施した。講義担当者は,大学教員4名(国際経済学・家庭経営学・社会科教育・家庭科教育担当者),北洋銀行行員1名,現職教員4名(小・中学校教員各2名)およびTAとして各キャンパスに大学院生を配置した。授業システムとしては,双方向(3方向)のテレビ授業と併せて,各キャンパスにおける現職教員の対面授業を行った。受講学生は97名であった。内訳としては,学年構成は,1年64名,2年28名,3年2名,4年3名であり,性別は,男性66名,女性31名であり,キャンパス構成は,札幌校31名,旭川および釧路校各33名であった。受講学生に対して実施した,金融教育に関するイメージや考えに関する事前・事後アンケート,ならびに講義「金融教育」に対する授業評価結果等を基に,分析・検討を行った。【結果および考察】「金融教育」という言葉から連想する言葉としては,事前・事後とも“銀行”が最も多く,それに“お金”“経済”が続いた。事前では,“株”“為替”という言葉もあげられていたが,事後では“家庭科”“社会”という教科に関わる言葉があげられていた。一方,「金融教育」という言葉からイメージするものとしては,事前・事後とも“難しい”が最も多く,以下,“楽しい”“大切”“複雑”等があげられた。事前では“かたい”という言葉もあげられていたが,事後では“役立つ”や“面白い”があげられていた。また,金融教育を教えることのできると思う教科等については,小・中・高校いずれも,事後の方が事前より,算数や数学が最も減少した。一方,技術・家庭は最も増加し,それに,小・中学校では道徳・特別活動,高校では地理歴史が続いた。特に中学校の教科における増減の幅が最も大きかった。さらに,金融教育についての考えを4段階で尋ねたところ,とても思う・思うと回答した人は,事前より事後の方が,楽しいは45.6%,家庭で教えなくてはならない内容は12.5%,学校で教えなくてはならない内容は11.5%増加し,一方,社会人になってから学べばよいは9.4%,授業をすることは難しいは2.9%減少した。事前では,中・高校から学べばよいは60.8%であったが,事後では,小学校低・中学年からが66.3%となった。双方向による授業システムについては,長所・短所双方が指摘されたが,複数の教員が担当すること,対面方式を取り入れたことについてはかなりの高評価を得た。また,金融教育の教育方法や実践について,とても役立ったと多くの学生が回答していた。今後さらに金融教育について学びたい,教員になって実践したいと回答した学生も多く,金融教育実践者育成のための一定の効果を及ぼしたものと考えられる。
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© 2012 日本家庭科教育学会
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