抄録
<B>1.研究の背景と目的</B><BR> 現代の環境問題には人間生活が深くかかわっており、一人ひとりが持続可能な社会づくりに向けて責任ある行動をとることが求められている。家庭科についてみると、新学習指導要領においては「消費生活と環境」に関する内容が小・中・高の全段階において必修となるなど、その役割は拡大している。その際、家庭科であっても、個人のライフスタイルの転換だけでなく社会とのかかわりや社会への影響を意識すること、すなわち市民性(シチズンシップ)を育む教育の視点がより重要になってくる。家庭科におけるシチズンシップ教育の充実のためには、一人ひとりの行動にどんな意味があるのか、社会とのつながりを含めてより深く認識させることが大切になる。学習の意味や意義を認識していなければ、実際に環境を考えた行動につなぐことは難しい。そのためには例えば、「フードマイレージ」や「ISO」「グリーンコンシューマー」「持続可能性」など、比較的新しい言葉の意味や活動事例を知ることで視野が広がり、行動の指針が得られるということがある。また、近年では企業の環境活動や社会貢献、NPOの取り組みなども活発化していることから、それらに関する具体的な情報を得ることで知識と意識の両面を育て、企業や商品を意識的に選ぶことで、社会を変える力になることも伝えたい。これらは、グリーンコンシューマーになることでもあり、現在求められている消費者市民教育につながる学びといえる。<BR> 本研究では、はじめに家庭科における「消費と環境」に関する学習の現状について教科書内容から整理する。そのうえで、家庭科を学んで間もない若者の知識、意識および行動に関するアンケート調査を行い、現代の若者の環境と消費に関する実態を探る。それらの結果をもとに、今後の家庭科における環境と消費に関する学習のあり方、授業や教材づくりの方向性を探ることを目的とする。<BR> <B>2.研究の方法</B><BR>(1)高等学校家庭科教科書における「消費生活と環境」に関する記述の分析。<BR>(2)若者を対象とした「消費生活と環境」に関する質問紙調査の実施(調査対象:大学生241名、高校生110名)。<BR>主な調査内容:環境用語・環境マークに関する知識・理解/企業の環境に関する取り組みへの関心・知識・態度/消費行動における環境配慮/身近な環境に関する取り組みへの関心・意識・態度/家族の環境への関心<BR><B> 3.結果および考察</B><BR>(1)高等学校家庭科教科書(平成19年発行)の関連内容の記述は、その前のもの(平成15年発行)と比べて、種類・量ともに増加していた。<BR>(2)家庭科教科書にみられる環境関連用語について、「地産地消」は認知度が高いものの、「グリーンコンシューマー」「フードマイレージ」を「意味まで知っている」大学生は3割強と約2割など、予想以上に認知されていないことがわかった。情報源として最も多いのは「学校の授業」ついで「テレビ」であった。<BR>(3)環境マークについては「エコマーク」の認知度は高いが、比較的新しいマーク類はほとんど意識されていなかった。<BR>(4)身近な企業やNPO等の環境取り組みへの関心・意識は低く、レジ袋を断る、環境に配慮した商品を買う、などの環境配慮行動に結びついていなかった。<BR>(5)社会を変えるという視点からみると、企業等の環境への取り組みが経済的・社会的に評価されることが重要である。今後は、教育においてもその点を意識させるような学びをつくっていくことが大切になるといえる。<BR> ※本研究にあたりご協力いただいた、学部4年生の浦林郁美さんに感謝いたします。