抄録
【目的】新学習指導要領では,専門科目「フードデザイン」の目標として新たに「食生活を総合的にデザインするとともに食育の推進に寄与する能力と態度を育てる」ことが加わり,内容の構成に「食育と食育推進活動」が取り入れられ,学習内容を生かし家庭や地域において食育に関する実践活動に積極的に取り組むことができるようにすることが求められている。このような食育推進の視点をふまえた教科指導のために,また個々の生活実践につなぐためには,生徒の学習意欲を高める単元構成と指導の工夫が不可欠である。そこで,①生徒自身が課題だと考えている基本的な技術の定着をめざし,技術の向上から生徒の自信へとつなげ,意欲を高める,②調理実習の進め方を工夫することで,生徒の思考力・判断力,表現力を高める,③個別に作る調理実習を行い,個々の実践力を高めるという3つの内容を取り入れた「フードデザイン」の単元を提案し,教材及び指導方法の工夫の成果を検証することを目的とした。<BR>【方法】広島県立高校の家庭に関する専門学科の3年生を対象とし(2年次に2単位,3年次に3単位,5単位履修),2012年の2学期に12時間と10時間の題材で実施した。<BR>実践1(2012年10,11月)本単元は,小麦粉料理の単元で行う3回の調理実習において,調理技術の定着を図ることを目的に,全員に「切る」作業を行わせる内容を設定した。また,生徒の思考力・判断力・表現力を高める取り組みとして,切った野菜やその切り方を生かし,調理実習で作る他の献立に合う料理を考え,調理する内容も取り入れた。調理実習ごとに自己評価をさせ,最後に3回の「切る」作業の個々の変化を写真で確認しながらまとめの評価をおこなった。<BR>実践2(2012年11,12月)単元名は「一汁二菜のワンプレートクッキング」とし,これまでの「フードデザイン」の学習の集大成として,卒業後に一人暮らしすることを想定し,1人分の一汁二菜の献立を考えて作る単元を設定した。調理は,片づけを考慮して,1つのプレートに全てをのせるワンプレート調理を基本とした。個々のレシピをまとめ,レシピ集を作成し,生徒に配布することとした。実習では,個々に自分の考えた献立のレシピを使って調理した後,献立を改善し,2回目の調理実習は,他の生徒が作ったレシピを見て調理する様式で行った。実習後の評価レポート並びに2回の調理実習での個々の調理作品を活用して成果をとらえた。<BR>【結果】実践1後のアンケートから「切る作業を通して上達したと思う」生徒は,あてはまる56.4%,ややあてはまる41.0%おり,ほとんどの生徒が,以前より上達したと実感したようである。「切る作業が上手くできると調理に自信がつく」の項目については,ほぼあてはまるを含め全ての生徒が,あてはまると答えている。確かな技術を身につけることが自信につながるといえる。また,「習得した調理技術を日常生活で生かしていると答えた生徒は,あてはまるが33.3%,ほぼあてはまるが51.3%おり,8割を越える生徒が習得した技術を日常生活で生かしていることがわかった。実践2後の生徒の評価レポートでは,自分の考えた献立の課題として,調理作品の色どり(12名),量(11名)を挙げている生徒が最も多かった。切り方や段取りについて挙げている生徒はおらず,実践1を経て,以前より自信を持って調理ができているのではないかと推察される。科目履修後の調査では,「調理技術が向上した」と答える生徒が97.5%,「家庭で調理する機会が増えた」80%,「日常の食事で栄養バランスを考えるようになった」92.5%等,学んだことが自分や家族の食生活に生かすことへとつながっている様子が伺えた。また,「調理に関することをもっと学びたい」と考えている生徒も92.5%おり,「フードデザイン」の学習が,単元構成の工夫によって, 調理技術の向上と自信につながり,生徒の意欲を高め,家庭での生活実践へと結びつくことが明らかになった。