抄録
【研究目的】
近年、消費者教育の充実が求められているものの、多くの教育現場では「系統的・計画的な消費者教育」が提供されていないと指摘されている1)。消費者教育は、主に家庭科や社会科で行われているが、特に家庭科では衣食住などの各分野における体系立てた消費者教育が必要であると言える。筆者らは、体系的な消費者教育教材を開発することを目指してすでに食生活及び衣生活分野の教材を作成し、その効果を検証してきた2)3)。本研究では、住生活分野において「安全」「契約・取引・家計」「生活情報」「環境・責任・倫理」の4領域の目標が達成できるような体系立てた消費者教育を目指す教育教材作りを行った。
【研究方法】
大学生の住生活に関するアンケート調査から、住生活に関する消費行動の実態をふまえて消費者教育を体系的に行うための領域別目標を掲げ、その目標を達成できるような教材作りを「住生活分野」において行った。具体的には、「一人暮らしをする」という設定で、住まい選びの際に『大切にしたい価値』を各自がダイヤモンド・ランキングの手法によって選択し、その結果についてグループで意見交換を行わせ、その後、条件カード[ライフステージカード]をグループで1枚引かせ、その条件にふさわしい住まいを考えさせることにより、大切にしたい価値は、個人の考え方や、家族の状況、ライフステージによって異なることに気付かせるようにした。多くの校種で活用できることを目的としているが、今回はまず高校・大学で活用できる教材作りを行った。
【結果及び今後の課題】
作成した教材のねらいとして、「安全」「契約・取引・家計」「環境・責任・倫理」の3領域に大切にしたい価値の内容が含まれており、一方、住まい選びの後半の教材は、間取り図を選択する際に複数の不動産会社やインターネットからの情報収集ができるか、また実際の広告を用いて情報を読み取る力を育成するなど、「生活情報」領域の目標が達成できる内容とした。全体(4時間を想定)の指導の流れは、まず、大学生になって一人暮らしをする際の住まい選びで大切にしたい価値を9項目から選びランキングし、最終的に、条件に合う住まいを間取り図から選ぶという学習である。「安全」領域としてバリアフリーなど安全性に関する情報を確認させ、安全に暮らせる社会、防犯を意識させ、「契約・取引・家計」領域で契約の意味・内容や契約上の権利と義務を理解し、家計全体を意識しながら家賃を考えさせるようにした。「環境・責任・倫理」領域は、地域の環境や地域の住民の生活モラル(ゴミの分別や駐車方法)を意識して行動しているか考えさせるようにした。その後、間取り図を読み取り、条件に合う住まいを選択する際に、「生活情報」領域の目標を達成できる教材とした。授業で事前・事後調査を実施することによって、ねらいをより確実に学習者に伝える工夫をした。今後、複数の教育現場で実践し改良を重ね、他の校種等でも活用できるようにしていく予定である。
1)日本消費者教育学会「消費者計画に関する提言」(2004年12月13日)内閣府へ提出した意見書
2)「食生活分野における消費者教育教材の検討-教材開発の成果と課題-」吉井美奈子他、(2012)消費者教育第32冊、日本消費者教育学会
3)「体系立てた消費者教育を目指す教材開発について」吉井美奈子他、日本家庭科教育学会第55回全国大会、2012.6.30