抄録
B>背景と目的</B><BR> 現代社会に生きる私たちの暮らしは、地域から地球全体につながる環境問題や経済問題と深くかかわっており、持続可能な社会を形成する主体者を育成する学びは重要な教育課題となっている。家庭科においても、ESD(Education for Sustainable Development)視点を取り入れたライフスタイルの変革をめざす多様な授業や教材の開発が求められている。<BR> 本研究では、これまで、一部の教科書にはあったものの、家庭科(家庭分野)において授業例がほとんどみられない、木材(特に国産材・間伐材)と消費をテーマにした家庭科の授業および教材開発と実践を試みる。木材は住まいとの関連で語られることが多いが、それだけでなく、「消費生活と環境」の学習として、身近な生活用品をとりあげ、木をより身近に感じられる授業としていくことは家庭科として有効な学びになると考える。社会科や技術・家庭(技術分野)などでも林業や木材に関する学習は行われているが、生活者の視点から、国産材・間伐材の製品利用(消費)と森林の役割(二酸化炭素削減・土砂崩れ防止・水源保全・省エネルギーなど)を関連付け、さらに人工林の循環等について学ぶことは、家庭科で行うべき内容であろう。消費行動の持つ意味・影響力について考えを深めることは、グリーンコンシューマーの視点に重なり、価格の安さ、見栄えなど、従来の価値観だけでない別の価値観で行う消費行動について考えることで、実践的行動につながる意識を育てる学びとしたい。<BR><B>方法</B><BR>1)日本の森林および林業の実態と各地の国産材・間伐材利用を進める取り組みと、施設、住宅、インテリア、生活用品、文房具、おもちゃなど、国内諸地域の国産材活用の実態について調査した。2)調査結果をもとに国産材・間伐材に関する教材を作成し授業を行った。実施時期は2013年1月、香川県内の家庭科教員の協力を得て、「技術・家庭科(家庭分野)」として中学2年生3クラス、「家庭基礎」として高校1年生5クラスで実践した。教材として使用したのは間伐材を利用した国産割り箸と中国産の割り箸(各50膳)、国産材のおもちゃ(積み木やパズル)、文房具(バインダー)、輪切りのスギ間伐材、ヒノキチップ,ペレット(固形燃料)とA3サイズの写真パネル(地域の住宅、人工林の循環、ペレットストーブ、ペレット等)である。3)授業後の振り返りシートで2種類の問いを示し、生徒の考えとその理由についての記述を分析した。<BR><B>結果および考察</B><BR>1)各地で‘木育’や‘木づかい事業’の取り組みが見られ、国産材や間伐材製品の消費を促す活動がみられた。<BR>2)教材として、写真パネルと具体的な木製品を多様に準備し、触ったり匂いをかぐなどの体験的な活動を取り入れたことで、中学校、高等学校の両方で生徒の関心や学習意欲を高めることができた。<BR>3)生徒の記述を整理し分類した結果、ほとんどの生徒が国産材・間伐材製品を購入したいとし、理由として最も多かったのが、質感にかかわる「ぬくもりがある」「いやされる」といった内容だった。続いて「環境に良いから」「地域の活性化」「林業のために」「デザインがよい」といった記述が続いた。 <BR>4)木のおもちゃを見たり触ったりすることは、家庭科(技術・家庭科)の保育学習や、技術・家庭科の技術分野での木材(材料)の学習と関連させて学びを深めることも考えられる。今回は時間の制約から取り入れられなかったが、今後は木材の熱伝導性などについても教材化する予定である。 <BR>5)本研究内容は他教科との関連が深い内容であるため、他教科で学習したことがどのくらい定着しているのか、事前に把握したうえで行うことで、学習効果はより高まると考えられる。消費者市民を育てる観点からも、家庭科で生産まで視野に入れた学びを大切にしていきたい。<BR>※本研究の実施にあたって協力いただいた、小林由香里氏(総社市立山手小学校)、福家亜希子氏(香川大学附属高松中学校)、植田幸子氏、的場幸子氏(坂出商業高等学校)に感謝いたします。