抄録
目的
中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(1999)において、「学校教育と職業生活との接続」の改善を図るために、小学校段階から発達の段階に応じてキャリア教育を実施する必要があると提言されて以降、小・中・高等学校において、キャリア教育の充実が喫緊の課題として図られてきた。中学校では職場体験活動が必修化し、大学等においても積極的にキャリア発達支援を行い、インターシップ等が実施されるようになった。特に中学校における職場体験活動は、2005年度に開始した「キャリア・スタート・ウィーク」(5日間連続の職場体験活動を推進するための全国キャンペーン(文科省))により、2003年度の実施率は88.7%、そのうちの43%は1日のみの実施であったが、5年後の2008年度においては、実施率96.5%、1日のみの実施13.6%、5日以上の実施20.7%と大幅に増加し、その成果が期待されている。しかし、依然として、子どもたちが将来就きたい仕事や自分の将来のために学習を行う意識が国際的にみて著しく低く、学校生活と社会生活・職業生活が乖離しており、それに伴い、教科学習に対する興味・関心が低い状況であることが明らかとなっている(TIMSS調査2007・PISA調査2003, 2006)。そこには、職場体験活動を実施したことのみで、キャリア教育を実施したと見なしていた中学校が少なくなかったこと、当初、キャリア教育が若年層の雇用や就業をめぐる問題の解消策の一環として位置づけられたことにより、小・中学校やいわゆる「進学校」とよばれる高等学校において、体系的なキャリア教育が遅れたことが一因と考えられている。
また、キャリア教育は、従来、「進路決定の指導」を目的とした進路指導、「専門的な知識・技能の習得」を目的とした職業教育で行われており、「キャリア発達を促す教育」としてのキャリア教育となった現在も、職業生活における自己実現を希求することに重きが置かれていることに問題があるとの指摘もある。すなわち、職業生活、家庭生活、地域生活といったライフキャリアの視点からのキャリア教育の実践が希薄であり、ライフキャリアの視点から将来の生活の一部として、生活設計の中で職業の在り方を考え、自立という観点を直接的に捉える家庭科教育においても、充分にその任を果たしているとは言えない状況である。
そこで、本研究では、大学生対象調査により、中学校や高等学校の職場体験の実態や認識を明らかにし、ライフキャリア意識やキャリア教育において育成すべき能力である「基礎的・汎用的能力」との関連性等を検討し、家庭科における職場体験活動を含めたキャリア教育の可能性を探ることを目的とする。
方法
Y大学に在籍する全学部(教育人間科学部、工学部、生命環境学部、医学部)の大学1年生を対象に、アンケート調査を実施した。調査実施時期は2012年10月上旬、調査対象者は、男子学生533名、女子学生277名、計810名である。
結果及び考察
中学校で職場体験活動を経験した学生は81.9%、高等学校でインターンシップを経験した学生は12.1%であり、高等学校(特に普通科高校)でのインターシップ活動はあまり実施されていないと推察される。また、中学校の職場体験の日数は1~2日間が63.2%、3~4日間が23.4%、5~6日間が8.8%他であり、日程的にも短期間の学生が大半を占めた。しかし、中学校の職場体験については、「楽しかった」86.7%、「学ぶことがあった」79.2%、「将来について考えが深まった」58.5%となり、学生の多くは、職場体験を肯定的に捉えていることが明らかとなった。また、中学生にとって望ましい職場体験として、「希望する職種」「実際に職業体験ができる」「働く大人の姿を間近で見られる」「将来を具体的に想像できる」等があげられた。