抄録
1. 研究目的 忙しい小学生が家事に関わる機会が少ない。平成24年度の全国学力学習状況調査の質問紙調査では,「家の手伝いをしていますか」の問いに「よくしている」と答えた児童は33%にすぎず,家事への積極的参加をしているとは言い難い。また,池崎は家庭科教育の目標について「家庭での実践が行われてこそ究極的な目標である実践的な態度が育成されるので,児童生徒を取り巻く環境を熟知したうえでの目標設定を行う」としている。(2009)家庭科の授業で学習したことを家庭実践につなげることが家庭科教育の目標でもある。そこで,本研究では,第6学年の児童に対し,家事の家庭実践の内容を継続的に記録させることで,児童が意欲的に且つ継続的に家事に取り組むことを期待する。そして,家庭科の授業との関連を記録から調査して,家庭科の授業効果を検証し,今後の指導のあり方を検討することを目的とする。なお家事の定義は今井ら(1993)は家事労働を「衣食住に代表される生活資料の消費である」としている。本研究では,小学生には家事労働ということばは適さないと考え,先行研究を踏まえこのことを「家事」とする。
2 .研究方法及び仮説 A小学校6年生の児童を対象に,6月~2月の授業日の家庭学習に「家の仕事カード」の記入を課題として家事参加を促した。「家の仕事カード」には,継続性を認識させるために「日付」,内容把握のなめに「家の仕事(内容)」,児童の意識を捉えるために「感想」,家族との関わりを認識させるために「家族のことば」の項目を記入させた。そして,その内容を第1期,第2期,第3期の各30日間,小学校学習指導要領のA~D領域ごとに分類し,家事の回数の変化を示し,児童の家事参加の変容を検証する。<自己の役立ち感><経験の継続><家事参加の必要性の認識>また,家族との関わりを認識させるために<家族からの働きかけ>の視点で分析する。 また,児童の事前事後調査や保護者への事後調査により,児童の家事参加を促すことにつながった要因や,家庭科の授業との関連を明らかにして,「家の仕事カード」継続の有効性を実証する。
3.結果及び考察(1) 継続性について 第1期(641),第2期(655),第3期(690)と,実践した家事の総数が増え(削除:ていっ)た。継続的取組によって,家事の参加度は高まっていったと言える。(2)意欲化について 事前調査では,<家事への参加>については,事前調査では40%の児童が「している」と答えにすぎなかったが,事後調査では97%に増加した。教師の働きかけが家事参加の機会を設定することにつながった。また,その要因として家族との関わりがあげられる。「家族は喜んでくれましたか」の問いに,児童は「喜んでくれた」57%どちらかといえば喜んでくれた」43%と<家族からの賞賛><家族への自己の役立ち感>を肯定的に捉えている。(3)家庭科との関連について① 領域について 児童の仕事内容を学習指導要領のA~D領域に分類した。D領域に関する内容が少ない。今後の家庭科授業での指導内容の充実が求められる。② 学習内容と家庭実践について A児は仕事が風呂そうじだけでなく,米とぎ,夕食作りの補助と内容が増えていった。家庭科の授業と家の仕事の関連では,6月に卵料理の調理実習をした後に,家庭実践を行っている。また,7月には不用品の始末を学習した後に,夏休み以降ごみ出しの仕事が決まった仕事になった。 以上より,「家の仕事カード」の継続的取組は,児童の家事参加を促すこと,家庭科の授業を家庭実践につなげること,家庭科の授業構想や教材研究を深めることに有効であることが実証された。