日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: P18
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56回大会:ポスター発表
小学5年生の被服製作用語の知識や技能は中学3年生までにどのように変容したか
*日景 弥生
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抄録
はじめに
 家庭科の授業で行われる実習は、学習の手段として位置付けられている。発表者は、小学校家庭科学習内容に関する児童生徒の知識および技能の実態調査を行っている。男女共修前の1989年調査と共修後の2007年調査を比較したところ、中学1年生男女と大学生女子では、小学校家庭科の授業時数の減少や日常生活における縫製機会の減少により知識や技能の程度は低下したが、大学生男子では男女必修による効果がそれらの影響を上回り、知識や技能が向上したことなどを報告している。以上のようなことを踏まえ、本研究では、2007年に小学5年生だった児童を中学3年生まで追跡調査し、被服製作の知識や技能の実態を調査することを目的とした。
方法
1.アンケート調査
1)調査対象:下記の3回の調査全てに加わった2007年に小学5年生だった92名(男子44名,女子48名)とした。
2)調査時期:小学校家庭科の学習前、小学校家庭科終了後で中学校家庭科の学習開始前、中学校家庭科学習をほぼ終了している時の実態を把握するために、2007年5月、2009年5月、および2011年12月に実施した。なお、調査時期の対象者の学年は、順に小学5年生、中学1年生、中学3年生である。
3)調査内容および方法:小学校家庭科教科書に記載されている被服製作用語39項目について、「知っている」または「知らない」で回答させた(用語に関する知識)。これら39項目は[用具][縫製方法][布・型紙]の3つの語群に分類でき、それぞれの項目数は順に15、19、5項目だった。この語群のうち、被服製作技能を伴う[縫製方法]に関する語群のうちの17項目についても、「できる」または「できない」で回答させた(技能の自己評価)。
2.「ボタン付け」テスト
1)調査時期および調査対象;上記のアンケート調査と同じとした。
2)調査方法
【試料】綿ブロード、縫い針、糸を用いた。
【テスト方法】「布に二つ穴ボタンをつけなさい」と指示した。
【評価方法】評価基準を決めて6項目により評価した。
結果および考察
1.用語に関する知識 各語群の「知っている」割合は、小5では[用具](73.4%)>[縫製方法](50.4%)>[布・型紙](36.7%)、中1では[縫製方法](93.2%)>[用具](89.5%)>[布・型紙](75.9%)、中3では[縫製方法](91.7%)>[用具](88.6%)>[布・型紙](71.6%)の順で低く、中1と中3の順序は同じになった。 学年進行による「知っている」割合は、[用具]では小5(73.4%)<中3(88.6%)<中1(89.5%)、[縫製方法]では小5(50.4%)<中3(91.7%)<中1(93.2%)、[布・型紙]では小5(36.7%)<中3(71.6%)<中1(75.9%)の順に高かった。 
 男女別にみても、各語群の「知っている」割合の順序は同様になった。しかし、同じ学年や語群の「知っている」割合は、いずれの場合も女子の方が男子より高く、その差は約2~20ポイントだった。同じ学年の男女でχ2 検定を行ったところ、小5では16項目、中1では6項目、中3では7項目で有意差が認められた。全ての学年で有意差がみられた項目は、[布・型紙]の「型紙」で、いずれの学年でもp<0.01だった。
2.技能の自己評価 [縫製方法]の「できる」割合は、小5(32.2%)<中3(81.6%)<中1(85.5%)の順に高く、その順序は「用語に関する知識」と同じだった。男女別にみても、「できる」割合の順序は同様になった。しかし、同じ学年の「できる」割合は、女子の方が男子より高く、その差は約10~20ポイントだった。同じ学年の男女でχ2 検定を行ったところ、小5では10項目、中1では4項目、中3では3項目で有意差が認められた。全ての学年で有意差がみられた項目は、「玉どめ」だった。
3.「ボタン付け」テスト ボタンつけの調査では、6項目の平均の正当率は、男子では小5で75.0%、中1で83.8%、中3で70.8%、女子では小5で83.4%、中1で93.4%、中3で79.9%と、いずれの学年でも女子の方が高く、なった。また、男女とも、平均正当率は小5から中1になると高くなるが、中3になると低くなった。 
 各学年の男女別でχ2 検定を行ったところ、小5ではいずれの項目でも有意差はみられなかったが、中1では「糸が3~4回巻けてある」(p<0.01)の1項目で、中3では「玉結びができている」(p<0.01)と「玉どめができている」(p<0.05)の2項目で有意差がみられた。
 これより、「ボタン付け」技能については、小5では男女差はみられないが、学年が上がるにつれて男女差がみられることが示唆された。
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