日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: P19
会議情報

56回大会:ポスター発表
小学校家庭科衣生活内容「洗う」の検討
*今村 律子赤松 純子潮田 ひとみ與倉 弘子深沢 太香子山田 由佳子
著者情報
キーワード: 衣生活, 小学校家庭科, 洗濯
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
1.目的
 発表者らは、家庭科衣生活内容について、基礎基本となる学習内容の明確化を検討 している。第55回大会では、家庭科教科書の「洗う・洗浄」について、衣生活だけでなく、小学校家庭科全般での記載について被服管理学の視点から精査し、学習の順序性が考慮されていないこと、内容について学習者に誤解を生じさせる記載があることを指摘し、洗浄・洗うことに関する系統的学習の必要性を述べた。本研究では、小学校学習指導要領解説家庭編に記載されている「洗濯ができる」(手洗いを中心として洗濯の基本について学習する)という内容について検討し、小学校の学習内容の骨子を提案する。
2.方法
 現学習指導要領解説及び2011年度から使用されている2社の小学校家庭科教科書における衣生活内容「洗濯」を省察し、被服管理学の視点から小学校家庭科における衣生活「手入れ」の内容を精査した。
3.結果及び考察
(1)洗濯学習の基本
 小学校においてまず基本的に学習すべき内容は、次の2点であると考える。すなわち、
A. 汚れ(異物)を除去して空気と置き換えるためには、3要因 [水(溶媒)、洗剤(界面活性剤:溶剤)、物理的な力] が必要である。
B. 汚れは、性状から4種類 [水溶性・油溶性・固体粒子・微生物(カビ)汚れ] に分類される。
  両教科書における小学校の手洗い実践は、作業工程が記載されているだけのように見受けられる。T社教科書には、ドラム式洗濯機を説明する資料として、「洗濯機も手洗いと同じように、たたいたりもんだりするような機械の力を加えることと、洗剤の働きによってよごれを落とす。」とあり、基本的学習内容の2要因だけが記載されている。また、汚れの種類は、両教科書とも付着様式からの分類のみの記載であり、性状からの分類は取り上げられていない。
(2)物理的な力
 手洗いによる物理的な力は、手もみ洗いやこすり洗いである。T社教科書では、汚れのひどいところの洗い方として、つまみ洗いのみが記載され、K社教科書では、もみ洗い、つまみ洗い、ブラシ洗いが取り上げられている。つまみ洗いやブラシ洗いは、部分洗いに用いられるものであるため、まずは手もみ洗いを基本として確認する必要があると考える。一方、取り扱い絵表示に記載されている弱い手洗いとして、押し洗いや振り洗いなども例にあげることが必要であると考える。それによって、物理的な力が強いほど汚れはよく落ちるが、衣服(布)は傷むという内容も扱うことが出来、洗濯物の布地によって洗い方を考えるということにつながる。
(3)汚れの種類と洗い方
 先に報告したように、住生活の内容では、小学校において汚れの種類、汚れ方に応じた清掃が取り上げられているにもかかわらず、衣生活の内容ではそれらの記載が認められない。K社教科書(P.82)では、「調べよう」において、軍手の泥よごれが水だけでどれくらい落ちるか、を記載している。泥などの粒子汚れは、物理的な力によって除去されるものであり、性状による汚れ4種類を把握しないと、水洗いによってどんな種類の汚れも、ある程度落ちると誤解することが考えられる。さらに、「参考1」では、靴下の手洗いと洗濯機洗いを比較している。写真から判断して、手洗いの汚れが良く落ちており、洗濯機より手洗いの方が良いという誤解を生じさせるかもしれない。ここでは、靴下全体を洗濯機で洗うという機械力より、汚れている部分を手でもむほうが、物理的な力が強いことを押さえたい。

 今後、以上のような骨子に基づいた授業実践を報告する予定である。
著者関連情報
© 2013 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top