抄録
【目的】
近年、各自治体では一般廃棄物の減量化目標を定め、環境保全に努めている。弘前市でも生ごみを含む可燃ごみは焼却灰を埋め立てて処理しているが、収集・運搬・焼却・埋立といった一連の過程で多額の経費を要し、平成21年度におけるごみ処理経費は約33億円(一人当たり年間約1万8千円)に上っている。2009(平成21)年告示の高等学校学習指導要領では、持続可能な社会を目指し、環境負荷の少ない衣食住の生活の工夫に重点を置くことが示されている。同様に、中学校「技術・家庭」家庭分野、小学校家庭科の内容においても資源や環境に配慮するなど、家庭科全般で環境教育の推進が目標とされている。そこで、本研究では食品の廃棄部分を繊維製品の染色材料として利用し、環境に配慮した被服教材となり得るか検討を行った。また、材料は、青森県津軽地方の特産品であるスチューベンの果皮をとり上げ、「ごみの減量化」「地域資源の活用」の双方からその有用性についても検討を行った。
【方法】
(1)スチューベンの染色性について
スチューベンの色素が、繊維製品に染色固着するか検討した。教材としての活用を考え、特別な薬品を使用せず安全に環境に配慮しながら染色できること、家庭でも応用できることを考慮した。そこで、一般的な染汁を煮出す方法を用い、媒染剤としては家庭でも手に入りやすいミョウバンを使用した。また、染色性の効果を確認するために、アルコール抽出、酢酸抽出による染色や、鉄、酢酸アルミ、酢酸銅、錫、無媒染で比較検討した。
(2)果皮の保存方法について
スチューベンは糖度が高く、秋の収穫後も2月まで冷蔵貯蔵することができるため、比較的長期間果皮を利用することができる。しかし教材として扱うには相当量必要となるため、果皮の保存方法について検討する必要があった。そのため、冷蔵、乾燥、冷凍、ミキサーによる粉砕の4種類の保存状態を比較検討した。
【結果及び考察】スチューベンの果皮は何れの染色方法においても差はあったが染色は可能であった。特に煮染めではスチューベンらしい鮮やかな紫色を呈し、酢酸や食酢を加えることによりさらに鮮やかになった。媒染剤を比較すると、ミョウバンは毛では鮮明な紫になるが、綿では青、青みの灰色となった。錫媒染は、綿・毛共に紫となった。果皮の保存方法の比較検討では、綿は冷蔵と冷凍では紫となったが、乾燥、粉砕ではベージュ・茶・灰色となった。毛もほぼ同様の結果となったが、冷蔵・冷凍ではよりスチューベンらしい紫となった。
以上の結果より、スチューベンの果皮は染色しやすく資源や環境に配慮した被服教材としての有用性が予想された。また、染色後の布はスチューベンらしい紫の他、赤みの紫、青みの紫、赤みの灰色、青みの灰色と植物染色ならではの味わいのある色となった。この微妙な色の変化を活かし布や糸を染色し、津軽の伝統工芸であるこぎん刺しの材料として利用するなど、地域に根差した教材としても展開することが可能である。さらに、冷凍保存した果皮も冷蔵とほぼ同様の色になったことから、収穫時期に関係なく年間を通して活用でき、指導計画の立案に導入しやすいと考える。今後は学習指導案の作成、授業の実践を通して、教材としての有用性を明確にする必要がある。