日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第56回大会・2013例会
セッションID: P23
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56回大会:ポスター発表
染色教材開発のための家庭科実習授業への高校生の意識の分析
*駒津 順子小松 恵美子森田 みゆき
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抄録
目的 これまでに高等学校家庭科における天然染料を用いた染色教材の開発と授業実践による染色条件の改善を行ってきた.今後の家庭科実習における染色教材の方向性を探るために本研究では,染色と被服構成(以下,被服),保育の絵本製作(以下,保育),調理について授業実践の質問紙調査による比較から分析を行った.
方法 授業実践は2012年5月~12月北海道立K高校1年生5クラス190名(男82,女108)の家庭基礎(50分単位)で,染色はバンダナ染色(染色用製品のバンダナに輪ゴムによる模様付け・後媒染)を2時間,被服はエプロン製作(スタイリュッシュヘイワ社のカフェエプロンを使用・基礎縫い中心)を12時間,保育は絵本製作(優良教材株式会社製のからくり絵本∞を使用)を3時間,調理は2時間連続で3回(和風だしの取り方・魚のおろしかた・五目炊き込みご飯・茶碗蒸し・野菜や乳製品を使った洋菓子など)の6時間で実施した.実習は,保育(5~6月),被服(8~9月),染色(10月),調理(10~12月)の順に実施した.質問紙調査の分析はExcelをもちいて,男女の違いはt検定,実習間の差はF検定(一元配置分散分析)ののちTukey法による多重比較,多重比較で検出された設問間の連関性はχ2検定および残差分析を行った.
結果 男女間については,有意水準1%で差がみられなかった.実習の評価における5つの共通設問項目((1)説明の理解度,(2)作業の難易度,(3)実習の楽しさ,(4)技術への関心と意欲,(5)学校における取り扱い,保育は(4)を除く4項目)の平均値を比較した特徴は以下のとおりである.染色は設問(4)技術への関心と意欲および学校における取り扱いが低く,それ以外の3項目は同じ程度に高かった.被服は,他の実習に比べ全体的に平均値は低く,特に(2)作業の難易度は低いが,(4)技術への関心と意欲や(5)学校における取り扱いは高かった.保育は,(1)説明の理解度は高いが,(5)学校における取り扱いは低かった.調理は,(1)作業の難易度は低いが,他のすべての項目が他の実習より平均値が高く,特に(3)実習の楽しさが最も高かった.また,設問項目別の相関係数は,染色と被服間の(5)学校における取り扱い(0.54),(3)実習の楽しさ(0.41)に低い相関が見られ,それ以外は総じて相関が見られなかった.
  そこで4つの実習の平均値の差を分散分析しTukeyの多重比較を行った.連関性が検出された組みあわせは全27組中20組で,染色に関する組みあわせは11組となり,実習間に影響した設問項目を残差分析により解析した.染色に関する残差分析の結果は,(1)説明の理解度では,染色の説明がわかりやすいと感じる生徒は,被服も同様にわかりやすいと感じているが,染色の説明がわかりにくいと感じる生徒は,被服構成もわかりにくいと感じている.(2)作業の難易度では,染色を簡単だと感じる生徒は,他の3つの実習すべてが簡単だと感じていて,染色を難しいと感じる生徒は調理を難しいと感じている.(3)実習の楽しさでは,染色を楽しいと感じた生徒は,保育と調理も楽しいと感じている.(4)技術への関心と意欲では,染色を自分でやってみたいと思う生徒は,被服や調理を自分でもやってみたいと思っている.(5)学校における取り扱いは,染色を学校で行った方がよいと思う生徒は,他の3つの実習もすべて行った方がよいと思っているが,染色を学校で行わなくてよいと思う生徒は,他の3つの実習も行わなくてよいと思っている.以上のことから,高校生による家庭科実習の意識は被服や調理に見られるように難易度が高くても実習を楽しむ傾向が見られた.また,1つの実習の理解度が低いとほかの実習の理解度も低くなった.
 今後は,繊維の種類と染着性等による染色の理解の深化や被服材料との関連,被服構成実習への応用などの展開が考えられる.
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© 2013 日本家庭科教育学会
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